らさんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

ら

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ザ・ドライバー(1978年製作の映画)

3.8

めちゃくちゃ渋くてハードボイルドで男くさい。普通に名作。セリフも少ないし、ロマンスもないし、主要キャラクターに固有名詞すらない削ぎ落としの美学。徹底的に無機質さが貫かれている。夜の街で繰り広げられるカ>>続きを読む

サマーフィーリング(2016年製作の映画)

3.7

次作の『アマンダと僕』同様、ひたすら快楽度の高い映像が全編にわたって続く。そして、本作もまた"喪失"を扱っている。舞台となるベルリンもパリもニューヨークも美しいが、彼女(サシャ)だけがいない。季節が夏>>続きを読む

パラレル・マザーズ(2021年製作の映画)

3.8

ペドロ・アルモドバル作品としてはあまり濃厚でない部類に入るかもしれないが、物語的な引きが強くて純粋に面白かった。大胆に時間を飛ばしたり、編集面でもテンポの良さが際立っている。鮮やかな色彩設計やメロドラ>>続きを読む

ガール・ピクチャー(2022年製作の映画)

3.8

自分のガールズムービー好きを再認識した。けっして大きな話ではないが、とてもパワフルで正しくエモーショナルでスウィートな映画。キャラクターたちも非常に魅力的に描けている。特に、明るくてチャーミングだけど>>続きを読む

アマンダと僕(2018年製作の映画)

3.8

全く予期していなかった出来事が突如として起こってしまうのが人生というもの、ということをここ最近特に実感していたので、とても他人事とは思えない気持ちで観ていた。ひたすら画が良くて、全編を通して映像の快楽>>続きを読む

SHE SAID/シー・セッド その名を暴け(2022年製作の映画)

3.7

思っていた以上にドライで硬質なタッチ。大げさに感情を煽ることなく、二人の記者が淡々と事実を収集するその様子を丹念に積み上げていくことでサスペンスの度合いを深めていくような非常に完成度の高い作品だった。>>続きを読む

ウォリアーズ(1979年製作の映画)

3.8

コミック的でダサかっこいい作品世界(良い意味でも)だが、オープニングは映像も編集も文句なしにおしゃれで素晴らしい名シークエンスだと思う。ネオンの光る観覧車、THE WORRIORSのおどろおどろしいタ>>続きを読む

インフル病みのペトロフ家(2021年製作の映画)

3.6

妄想と現実と記憶を行き来する物語はついていくのがかなり困難だった。シームレスかつ複雑なシーン転換やものすごい長回しの中、突如刺激的なアクションや暴力描写が挿入される強烈な映像世界にも気圧される。インフ>>続きを読む

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

3.8

序盤からいい歳した大人の男性二人が子供じみた喧嘩を始めたのが最高すぎて一気に惹きつけられた。めちゃめちゃ変な映画。

次第に物語は凄惨な様相を帯びていくが、凄惨であればあるほどどんどん滑稽に思えてくる
>>続きを読む

Zolaゾラ(2021年製作の映画)

3.7

A24配給なのに日本ではそこまで話題になっておらず、あまり注目していなかった作品。Twitter上の148のTweetを話の元にしているところだけでなく、音楽・効果音(iPhoneの操作音など)の使い>>続きを読む

マネーボール(2011年製作の映画)

3.6

すごく面白いしタッチも良い。しかし、あえて言うと、それ以上のものをあまり感じない映画でもある。本作の最大の魅力はあくまで「マネー・ボール理論によって、低予算の球団が奇跡の強豪チームへと変貌していく」こ>>続きを読む

白いリボン(2009年製作の映画)

3.6

今までに観たハネケの映画の中である意味一番すごいと思う。なのに、なぜだかあまり入り込めない。一見美しく静かで慎ましいが、その実、世界の嫌な部分(小悪党めいた)や不穏さが全て凝縮されたような北ドイツの小>>続きを読む

アフター・ヤン(2021年製作の映画)

3.8

家庭用人型AIロボットが普及した近未来SFというキャッチーな設定だが、非常にシンプルでミニマルな、一編の詩のような余白たっぷりの映像世界。その中にエモーショナルな物語がそっと隠されているような。特に好>>続きを読む

ストーリー・オブ・マイ・ワイフ(2021年製作の映画)

3.8

一見普通のファム・ファタールものかと思うとそうではない、奇妙なラブ・ロマンス。イルディコー・エニェディの前作『心と体と』に比べるとだいぶクラシックな趣だけれど。映像がとても美しく、ヨーロッパの街並みや>>続きを読む

トムボーイ(2011年製作の映画)

3.7

子供の頃は、みんな自分自身のアイデンティティというものが曖昧であった。成長して世間の目や社会の規範を内面化するようになると、無理にでも何とかそれを統合しようと努め、その代わりに社会的な"ペルソナ"を発>>続きを読む

特攻大作戦(1967年製作の映画)

3.7

「どうしようもない荒くれ者たちがカリスマ的なリーダーによって鍛え上げられ、大きな目標に向かって一つにまとまっていく」という今では珍しくなくなったプロットの先駆的な作品。『ロンゲスト・ヤード』も大まかな>>続きを読む

マッチ工場の少女(1990年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

アキ・カウリスマキの映画の登場人物は大抵みんな厳しい状況にあり、本作の主人公(イリス)の境遇は決して特別ではない。セリフも極めて少なく、例に漏れずドライなタッチ。にも関わらず、いくつかの部分で自分自身>>続きを読む

ロンゲスト・ヤード(1974年製作の映画)

3.8

とにかく面白かった。40分弱にわたる試合のシーンなんて『THE FIRST SLAM DUNK』のような興奮がある。他のスポーツでも十分成り立つような話だが、アメフト特有の肉体的なコンタクトの激しさが>>続きを読む

グリーン・ナイト(2021年製作の映画)

3.7

幻想的で時に前衛的なビジュアルと、映画としての基礎的・古典的な強度の高さが両立しているところがデヴィッド・ロウリーらしい。シンボルが意味深長に頻出する映像詩のような映像はとっつき難さもあるが、自然vs>>続きを読む

ブラックブック(2006年製作の映画)

3.7

過酷な舞台設定でもシリアスになり過ぎない、ブラックコメディすれすれの独特なタッチの娯楽作品で面白かった。二転三転する派手な展開の中でも、1944年のオランダで生き抜き、目的を達成しようとする一人のユダ>>続きを読む

パブリック・エネミーズ(2009年製作の映画)

3.7

賛否が激しく分かれる作品だが、マイケル・マンの映像美学や様式("追う男"と"追われる男"の構図など)へのこだわりはしっかりと詰まっている。銃撃戦の迫力も半端じゃない。ジョン・デリンジャーもメルヴィン・>>続きを読む

真夜中の虹(1988年製作の映画)

3.7

アキ・カウリスマキの映画らしく淡々と悲劇が続くが、主人公カスリネンが刑務所に入れられ、マッティ・ペロンパー(ミッコネン)が登場してから一段と物語の吸引力が増す。そこからラストシーンまでのゆるやかな感動>>続きを読む

秘密の森の、その向こう(2021年製作の映画)

3.9

「八歳の少女が森の中でpetite maman(小さな母親)と出会う」不思議な話であるにも関わらず、SF的な感じはほとんどなく、ファンタジー感も前面に押し出さない。対等になった親娘のシンプルでささやか>>続きを読む

戦争と女の顔(2019年製作の映画)

3.7

緑と赤の対比に彩られた絵画のような画面が美しい。ヘビーな物語だが、原案になったノンフィクション『戦争は女の顔をしていない』の内容を知ると、本作の脚本が極めて誠実に書かれているということがよく分かる。ク>>続きを読む

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

3.7

物語の核となる家族のドラマは、自分のような人間にとってはナイーブ過ぎるように感じられ、うまく接続できずモジモジしてしまった。それでも好きだし面白かったと思えるのは、端的に言えば「スピルバーグの映画」だ>>続きを読む

パラダイスの夕暮れ(1986年製作の映画)

3.9

元々派手とは言えないカウリスマキ作品の中でも本作は特に地味な物語として分類されそうだが、「ただの映画」という感じがしてとても好みだった。いい意味で「大したことない」だけに味わい深い作品。

独特の青み
>>続きを読む

別れる決心(2022年製作の映画)

3.8

思った以上に奇妙なラブロマンスで、とても面白かった。これまでのパク・チャヌク作品で印象的だった過激な暴力シーンや性的なシーンを抑えて、一見「普通に洗練された映画」っぽく見えるのが、余計にストーリーテリ>>続きを読む

ザ・プレイヤー(1992年製作の映画)

3.7

すごい豪華でよく出来た風刺映画。こういう役のティム・ロビンスいいな。劇中で語られているヒットする映画の条件=スターの出演、セックス、バイオレンス、サスペンス、ハッピーエンド等を本作自体が満たしていて、>>続きを読む

子猫をお願い(2001年製作の映画)

4.0

重たい現実を反映しつつもどこかチャーミングな作品で、偏愛する一本になった。もしかすると「洗練された映画」とは言えないかもしれないが、映像も良いしキャラクターも魅力的(華僑の双子姉妹の役割と扱いはややゆ>>続きを読む

ボーンズ アンド オール(2022年製作の映画)

3.8

モラルを飛び越えた奇妙な映画であることは確かだが、基本的には(アメリカン・ロードムービーへの愛を湛えた)アウトサイダー同士の普遍的なラブストーリーである。そういう意味でも『僕らのままで/WE ARE >>続きを読む

アンモナイトの目覚め(2020年製作の映画)

3.8

繊細な演出と映像。『ゴッズ・オウン・カントリー』同様、丁寧でとても良い映画だった。フランシス・リー監督は、自然と労働と愛を瑞々しく描くことに長けている。そして何より、ケイト・ウィンスレットとシアーシャ>>続きを読む

女と男のいる舗道(1962年製作の映画)

3.7

個人的アンナ・カリーナのベストアクト(の一つ)。

A面:『女と男のいる鋪道』
B面:『修道女』

という感じで。

もはや「演技が良い」のかどうかすらも分からないけれど、とにかくアンナ・カリーナを魅
>>続きを読む

コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)

3.8

画面に映し出されるのは、寒々としたロシアの風景や狭く薄暗い列車内ばかり。その余計な装飾や光のない映像世界がかえって美しく、内省的な雰囲気を際立たせている。まるで夢の中を旅するロードムービーのようだ。ま>>続きを読む

ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン/ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマン(1975年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

自分の好きなシャンタル・アケルマンのほぼ全てはこの映画に詰まっていると思う。約200分と長尺だが、この長さには必然性がある。通常の映画で省かれるような描写(淡々と繰り返される日常の動作・家事)が「省略>>続きを読む