ヤギさんの映画レビュー・感想・評価

ヤギ

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デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章(2024年製作の映画)

3.5

原作1話しか読んでないけど、あれがこうなるのか〜と感心。UFO周りのひらがなとかとくに。
3.11以降の世の混沌をモチーフにしてる感じはとても『シン・ゴジラ』。しかし、極端な思想に走る人への生理的嫌悪
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オッペンハイマー(2023年製作の映画)

3.5

入り乱れる時間軸と登場人物、そして情報の洪水。決して観やすい映画ではなかったが、あっという間の3時間だった。
オッペンハイマーの半生、というよりも彼を中心にした政治劇という趣。原爆投下後の広島・長崎を
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落下の解剖学(2023年製作の映画)

3.5

転落事件をめぐる法廷劇。
裁判では各種の証拠を基に、言葉と論理を用いて追求と弁護が行われる。しかし、そもそも人間同士の振る舞いや在り方は、言葉や論理で割り切れるものではない(そうも言っていられないので
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赤線地帯(1956年製作の映画)

4.0

売春防止法制定前後の赤線地帯で繰り広げられる、娼婦たちの群像劇。
複数のステークホルダーが入り乱れることで、搾取でありながら労働であり、ある一面においてはセーフティネットであり、高給取りでありながら被
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デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

4.0

スケールも画面も音も極大!文化人類学的フィールドワーク復讐譚、第二作。
預言者をめぐるストーリーが主のため、前作に比べて宗教人類学要素が増していた。なにかを信じる者にとっては、すべての事物は信仰に基づ
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ヴィタリナ(2019年製作の映画)

4.0

初ペドロ・コスタ。
まず、冒頭のショットに目が釘付けに。徹底的に影が強調されたカラーリングのなかで、時折覗く色彩。都市の片隅の移民、疲れ果てた聖職者、そして置き去りにされた女性。日の当たらない存在への
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憎しみ(1995年製作の映画)

4.5

パリ郊外を描く元祖「バンリュー映画」、ついに鑑賞。イスラーム映画祭、ありがとう。
「構造的な暴力と、それに反抗することの難しさ」という普遍的なテーマが、ときに詩的に、ときにこれ以上ないほどビビッドに描
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マリア 怒りの娘(2022年製作の映画)

4.0

初ニカラグア映画。
スカベンジャーとして生計を立てる少女の受難が、民話風の幻想を交えて描かれる。
ゴミ山に立つ子どもたち、掘立て小屋、工場、そして農場の迫り来る存在感。今まで映されていなかったものが映
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すべての夜を思いだす(2022年製作の映画)

4.5

多摩を舞台にした、3人の女性の一日の物語。
シュールで穏やかな空気感のなか、発掘物、写真、ホームビデオ、そして記憶といった要素が散りばめられる。これらは、街と人の「過去」の表れであり、どちらも時間が堆
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ファルハ(2021年製作の映画)

-

1948年に起きた、シオニスト武装勢力によるアラブ系パレスチナ人の虐殺「ナクバ」。これを生き延びた女性の実体験に基づいた作品。
穏やかな日常を突如襲う、理不尽な暴力に戦慄。
岡真里氏のアフタートークで
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カラオケ行こ!(2024年製作の映画)

4.0

綾野剛の業が深い。そして野木亜紀子の脚本がうまい。
一生分の「紅」を聴いた気がするが、この曲が持つ独特の印象は、同時代の日本でしか共有されないものだろう。
原作には描かれない周囲の人々がしっかり息づい
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青春の反抗(2023年製作の映画)

3.0

台湾、美術学生たちの青春と運動。
実際も混淆しているんだろうけれども、色恋と政治活動の食い合わせが悪かった。運動の行き詰まり→性的接触の繰り返しで、どちらのテーマにとっても不誠実に映った。
ロイ・チャ
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雨降って、ジ・エンド。(2020年製作の映画)

4.5

群青いろ作品2作目。
哀しく可笑しい人間讃歌。
「いいね」を稼ぎたい新人カメラマン(古川琴音)と、彼女の被写体となるピエロおじさん(廣末哲万)の掛け合いが最高。ずっと見てたい。お二人のファンになりまし
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彼女はなぜ、猿を逃したか?(2022年製作の映画)

3.5

初の群青いろ作品。
シュールな可笑しさと狂気が共存する、絶妙なドラマ。
後半に進むにつれ、後者の割合が多くなり、「これはないな」というオチらしきものから一転、新たな展開へ。新感覚。
「ガゼルを狩ろうと
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ボーはおそれている(2023年製作の映画)

3.5

全員、狂人。奇々怪界帰省映画。
ホアキン・フェニックス、怪演。アリ・アスター、覚醒。
治安が突っ切ってしまったボーの近所の様子が『インフル病みのペトロフ家』感あって強烈だった。SNSのTLをごちゃっと
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このハンバーガー、ピクルス忘れてる。(2023年製作の映画)

4.0

コミュニケーションのズレを愉しむ極上群像会話劇。
ポスタービジュアルからお察しの通り、『パルプフィクション』風に時系列バラバラの複数のストーリーが展開される。
平井亜門氏初めて観たけれども、後半から如
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ヴェルクマイスター・ハーモニー 4Kレストア版(2000年製作の映画)

4.0

ハーモニーとノイズが入り混じる黙示録。
物資不足に苦しむ街に、鯨の剥製と“プリンス”なる芸人を擁するサーカスがやってくる。社会不安は増していき、やがて臨界を迎える……。
相変わらずの白黒、ワンシーンワ
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ミレニアム・マンボ 4Kレストア版(2001年製作の映画)

3.0

台北、夕張、そして新宿。モラハラDV男と離れられない女の追憶。
オープニングが最高潮だった。スー・チーは綺麗でいらっしゃるけれども、主人公二人があまりにダメダメで胸焼け。
四つ打ちバスドラで始まるポッ
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ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア(1997年製作の映画)

4.5

余命わずかの男二人が海を目指す、決死のクライム逃避行。
ロックとカーチェイスと銃撃戦。とってもアメリカン風味なのだが、ドイツならではの雰囲気もあっておもしろい。展開のテンポもよく、基本はコミカル、ラス
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夜明けのすべて(2024年製作の映画)

4.5

人それぞれの“夜”に寄り添う、人間愛あふれる大傑作。
PMSとパニック障害。現代の日本社会で前提とされている「普通」から外れてしまった主人公二人。その出会いと変化、相互扶助、周囲の人々との交流が、温か
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バーナデット ママは行方不明(2019年製作の映画)

3.5

妻・母として家庭に囚われた芸術家が、自分自身を取り戻すまでのお話。
ひさしぶりにアメリカンなホームコメディを観た。人嫌いの建築家を演じるケイト・ブランシェットの一人喋りが主。ほぼ独壇場。
テーマは現代
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ジェヴォーダンの獣 ディレクターズ・カット(2001年製作の映画)

3.0

ラッパーR指定のフリースタイルで知った「ジェヴォーダンの獣」。18世紀のフランスに現れた未確認生物である。
この獣を話の中心として、マッチョたちが長髪を振り乱して近接戦を繰り広げまくるアクション映画。
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Here(2023年製作の映画)

4.5

苔のように極小かつ重大な出会いの物語。
今回は昼のブリュッセル。ルーマニア系の建設労働者と、中国系の蘚苔研究者の偶然の出会いを描く。
「都市と人」そして「森と苔」という、「全体と部分」を行き来するショ
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ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)

4.5

深夜のブリュッセル、そしてそこに息づく人々の相貌。
清掃業の仕事をしている女性は終電を逃してしまい、深夜の街を彷徨することとなる。鑑賞者は、彼女の一夜の歩みに同行する。
冒頭映される夕暮れの部屋とナレ
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王国(あるいはその家について)(2018年製作の映画)

3.5

新体験の朗読劇。
冒頭と途中の一部のみ、いわゆる映画っぽいシーンだが、それ以外は俳優たちの脚本の読み合わせが延々と映される(たまに風景も映るが)。しかも、ほぼ同じ場面の繰り返しである。監督によれば「俳
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違う惑星の変な恋人(2023年製作の映画)

4.0

めんどくさい人たちのめんどくさい恋愛会話劇。
主演4人が全員好演。とくに中島歩があのルックと声でどうしようもないチャラ男を演じているのがとてもよかった。莉子さん可愛いすぎやしませんかね。
今泉力哉作品
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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

4.5

頭脳は子ども、身体は大人のベラによる、冒険と受難、成長の物語。
「常識とは、18歳までに身に付けた偏見のコレクションである」とはアインシュタインの有名な言葉だが、ベラの記憶と経験は幼児であるため、“常
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瞳をとじて(2023年製作の映画)

4.0

失踪した俳優をめぐる、追憶と再生の旅路。
まず、登場人物たち全員の“顔”がめちゃくちゃよい。「老い」が大きなテーマでありながら、歴史が刻まれた顔面がとても魅力的に撮られており、悲壮感はなく、人間愛を感
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海街奇譚(2019年製作の映画)

3.5

虚構(らしきもの)と現実(らしきもの)が交わる、夢幻の港町スリラー。
色彩もショットも、カブトガニ頭の奇習も、クジラのネオンも大好きだったので、置いてけぼりにされても嫌いじゃなかったです。
『郊外の鳥
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みなに幸あれ(2023年製作の映画)

2.5

オメラスから歩み去らない人々。
「多数の幸福は少数の不幸の上に成り立つ」というテーマを地方の奇習系ホラーと掛け合わせた意欲作…なのだが、アイデア一発!という感じでいろいろと粗かった印象。
監督の世の中
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緑の夜(2023年製作の映画)

3.5

ソウルの夜を彷徨する、妖しくも切実なシスターフッド。
暴力的な夫に距離を取りつつ失踪した母親を探す保安調査官と、恋人に仕事を強要されている薬物の運び屋。男性支配からの脱却を試みるように、二人は逃避行へ
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