ピエールとジャンという2人の巡礼者の旅に、何の説明もなく、時代も場所もかけ離れたところにあった(とされる)事象が挿入される荒唐無稽な映画のようでいて、一貫してキリスト教が孕む「二重性」や矛盾を風刺する>>続きを読む
正義の反対は正義、という単純な話ではなく、不正が正になってしまう状況、正しいことが間違ったことのように感じられる社会の困難が直接的に伝わってくることにまず驚いた。
人生に何を求め、何を喜びに、幸せに>>続きを読む
シリアスな物語、展開のなかに突然コントのようなシーンを挟み込むのは北野武映画の常套手段で、緊張と緩和を繰り返す作劇スタイルが魅力のひとつだと思っていたからこそ、今回なぜ二部構成で、シリアスとコントを意>>続きを読む
「敵」とは結局何なのか、という主題にひたすら考えを巡らせるも終始確信を得ることはなく、だけれど楽しく、めちゃくちゃ笑かされながら見た。
フランス文学を教えていた元大学教授の渡辺儀助は、リベラルな知識>>続きを読む
『ゴーストワールド』『レディ・バード』『スウィート17モンスター』など、同じ棚に並べられるような作品はいくつか思い出すのだけれど、この作品は何かが足りないというか、スクリーンに映された人間模様以上のも>>続きを読む
“しゃがんでかたまり 背を向けながら
心のひとつも解りあえない 大人達をにらむ
そして仲間達は 今夜家出の計画をたてる
とにかくもう 学校や家には帰りたくない
自分の存在が何なのかさえ 解らず震えてい>>続きを読む
「死」や「生きること」にどう向き合うかというテーマを、誰もが感情的に入り込める、理解しやすい物語として映画にしていることが素晴らしく感じられた。
どこにでもいるような平凡な子どもの視点、感覚から、死>>続きを読む
観ていて気分が悪くなるというか、すごく危険な、ある意味邪悪な意図を感じる作品に思った。
犬とロボットが織りなす友情、あるいは恋愛のような関係性を描いた物語なのだろうけれど、セリフやナレーションなど、>>続きを読む
大人でも、子どもでもない時期を生きる人の無軌道さや辻褄のあわなさ、肥大化する自意識、世界への苛立ちのような普遍的なものを描いている、と捉えていいのかどうかわからないけれど、SNSに翻弄されるティーンエ>>続きを読む
作家の意図するところかはわかないけれども、これほど日本社会における「震災以前/以降」の違いを感じさせられた作品は初めてだった。
演劇「親密さ」を制作を追った第一部、おそらく演劇の全編を丸々提示した第>>続きを読む
人生ベスト級の映画体験だったかも…
33歳の男性である自分にとっては、この作品はコミュニケーションのありようを、言葉の感覚や感情な部分と意味など理性的な部分を対比させて描いているように感じられた。>>続きを読む
「和」と「恥」という現代の日本にも通じる日本列島の民俗性を映し取っている点がまず興味深かった。また「おりん」を通じて母・女性の役割、強さを描き出すことにより、「男性の弱さ」を強調し、家父長制における男>>続きを読む
五反田ガレージの追っかけ視聴逃れで。
映像の妙にクリアな質感、シーンの切り替えの早さ、インサートの多用、カメラと被写体の距離感もあって、映像作品の体裁として「映画」という感じがそこまでせず、広告映像>>続きを読む
「パパが死にませんように」——きっと貧しくも幸せであろう微笑ましい母娘を、この一言でまったく違ったふうに見せる冒頭の仕掛けにハッとする。
なのだけれど、映画、物語の全貌はなかなか掴めず、声帯を切除し>>続きを読む
本作を観て、自分は藤本タツキの作品がこんなにも好きだったのかと思い知った。無防備な人間の心をかなり際どく抉ってくるギリギリのセンスが、単に露悪的な筆者の趣味では片付けられないレベルで作者の作家性として>>続きを読む
自分史上もっとも「難解」な映画だっだ。
難しい映画も、理解できない映画も他にいくらでもあるけれど、それはそういうものとして観ている部分も大いにあるから、わざわざ難解だという印象を抱かない。でもホン・>>続きを読む
見えないからこそ想像が膨らむのではなく、見えないから「わからない」、「想像」ではなく知識で埋める必要がある……「あえて見せない」という手法自体はよくあると思うけれど、見えない、知らないが故の「無関心」>>続きを読む
「マーちゃん、俺たちもう終わっちゃったのかな」「馬鹿野郎、まだ始まっちゃいねえよ」
というあまりに有名なオチが最初から見えているにも関わらず、そこに至るプロセスであまりに魅せられる。高校生のあるべき>>続きを読む
最初はただのモノマネじゃんとおもってたけど、柳楽優弥の演じるたけしが本当にたけしに見える瞬間が何度かあった。それが本当に素晴らしかった。その成果は単に本人の俳優としての技量によるものではないだろうし、>>続きを読む
「小説にはよくある」なんてメタ的セリフがあるように「母親探しの物語」というベタな題材が丁寧に編み込まれ、演出が施された脚本によってここまで独自の質感、読後感の物語になっていてすごく心を打たれた。
コ>>続きを読む
アンドリュー・ヘイの『異人たち』を観た流れで鑑賞。原作は未読だが、こちらのほうが登場人物が多く、不要な人間関係も描かれることがまず気になり、アンドリュー・ヘイ版はかなりフォーカスを絞って主題を見出し、>>続きを読む
原作は未読だが、大林宣彦監督の映画版を見る限り、この『異人たち』は2020年代のイギリス・ロンドンを舞台に、主人公をゲイ男性として描く、という改変はあるものの、『異人たちとの夏』のプロットを大枠で採用>>続きを読む
韓国(アジア)とアメリカ(西洋)、男性と女性など、さまざまな差異について考えさせる映画だなと思った。
自立していて男性に頼らない生き方をするノラ/ナヨンのようなアジア人女性は、さほど映画などでは描か>>続きを読む
その歴史性や後続の作品に与えた影響をどうしても考えさせられてしまうがゆえに、初見ではまったく評価不可能な作品だと圧倒された。
坂本龍一がその晩年につくったアルバム『async』やシアターピース『TI>>続きを読む
「物語」という観点からのみ見たらどうってことのない部類に入ると思うし、展開は後ろ倒しにされ、引き延ばされた結果、正味30分程度のスケールのエピソードではあると思う。だけれども、見せ方やさまざまな技が冴>>続きを読む
試写で2回観ました。1回目は当時の政治状況や人物についての理解が足りず、オッペンハイマーの視点で繰り広げられる映像・物語の渦にただただ巻き込まれたように感じ呆然としてしまった。
人物関係や政治的背景>>続きを読む
坂本龍一さんの逝去から丸1年の2024年3月28日、渋谷で観た。
貴重な映像ではあるが、映画でもドキュメンタリーでもない報道特番のようなトーンの作品という印象だった。「坂本龍一はなぜ社会発信を強めて>>続きを読む
『資本主義リアリズム』で言及されていたので鑑賞してみた。
舞台は2027年、原因不明のまま人類が子孫を生み出すことができなくなった世界が描かれる。移民と不法入国者の問題、あるいは全体主義的なムードに>>続きを読む
人の脳は抽象的な思考を行うために「記憶の整理」をしているらしい。脳は物事をありのままに覚えているのではなく、一度抽象化し、整理して「記憶」となったものが保管されているのである、と。記憶は整理される過程>>続きを読む
原作未読なうえ、私自身は三宅唱監督の作家性について何か語る言葉を持ち合わせてはないけれど、人間の不器用な心の動きそのものと、旧来的な価値観が見直されつつある社会に生きる市井の人々の人間関係のぎこちなさ>>続きを読む
絵が安っぽく、映画というよりはドラマのような感覚で鑑賞した。会話がなんだか陳腐で、挿入されるニュースの情報、意味深なセリフまわしなど含めて、物語全体が「伏線回収」に奉仕しているような印象だった。その点>>続きを読む
「意味わからん」「よーわからん」「ワケわからん」
はちゃめちゃで一見無軌道に生きていったバンドマン、ヒー兄(森山未來)を理性で捉えることは難しい。ついでにいうと、そもそも音楽も本当はよくわからないも>>続きを読む
歴史的音楽映画にも関わらず、初見でした。でもその初見がこの「4Kレストア」版でIMAXシアターだったことを幸福に思う。ありふれた言葉ではあるけれど、「まるでそこにいる」臨場感にここまで迫った劇場体験は>>続きを読む
胎児の脳を移植された成人女性のベラは、「冒険」を通じて身体的快楽、知的/精神的快楽を獲得していくことで、ベラ自身を、女性という主体を「発見」していく。つまり、この物語は、女性の「社会における自由」、身>>続きを読む
いい役者、ユニークな物語を活かしきれておらず、脚本から音楽から要素要素が噛み合わないだけにとどまらず、むしろ打ち消しあってるかのような映画だった。
個人的に、大学の後輩として主人公の劔さんを知ってい>>続きを読む
「自分一人が幸福になるということは、恥ずべきことかもしれないんです」
病によって身分や職業など一切関係なく、「その町に暮らしている」という一点のみにおいて世界から見捨てられた人々を描いたカミュ『ペス>>続きを読む