シネマの流星さんの映画レビュー・感想・評価

シネマの流星

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ノスタルジア 4K修復版(1983年製作の映画)

5.0

意味不明、共感・握手できない、眠たい(実際に寝た)、イラっとすらする。なのに、観終わったあと映画を抱擁したくなる。

映画は写真を動かすアニメーションであるが、この映画は人物を止める。代わりにカメラが
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羅生門(1950年製作の映画)

5.0

雨、風、光。自然が活劇する。自然に活劇させる。天から降る豪雨、地面に這いつくばる女の叫び声。三船敏郎が言う「風が俺を狂わせた」

自然と人は対等。天地人は対等。黒澤明はどこまでも地平線を漕ぐ。

『羅
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リバー・ランズ・スルー・イット(1992年製作の映画)

5.0

川は地上の雲であり人生の五線譜。兄弟の関係は不変。でも関係性は流れていく。大人の階段をのぼる兄、川のように少年の水平をいく弟。フライ・フィッシングだけが時間を止めてくれる。良識や常識からはみ出しながら>>続きを読む

ドラゴンボール 魔神城のねむり姫(1987年製作の映画)

5.0

人生で初めて奈良の映画館で観た映画。

スケベなジジイがスケベな悪魔から美女を強奪する。自分の手をくださない。少年を使う。クリリンは大人にエロ本の賄賂を使う。汚いものには姑息で対抗する。とんでもない脚
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暗黒街(1927年製作の映画)

5.0

「世界初のギャング映画」という枕詞が無くとも素晴らしい。固定カメラだからこそ人物が生きる。

影の揺らぎ。これぞギャング。ゴッドファーザーも影に色気があるが、その源流と言える。

『Under Wor
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許されざる者(1992年製作の映画)

5.0

妻の死も、友の死も、一時の友情も、美しい女の顔も、そして映画も。あらゆるものが、あっけない。凶器ひとつで変貌する。銃弾ひとつで終わる。イーストウッドは最初から最後まで弱さを見せる。屈強なガンマンの西部>>続きを読む

WILL(2024年製作の映画)

5.0

命を撃ち、命を体内に入れる。東出の狩猟には逞しさと儚さが同在する。命を奪う残酷は愛と美。ディアハンターのカヴァティーナが似合う。人間は愛があるからではなく、愛を求めるから生きられる。狩猟ドキュメントで>>続きを読む

HANA-BI(1997年製作の映画)

5.0

凶暴な裸の大将。山下清にだって暴力性はある。北野武の映画で最も暴力が躍動する。いちばん静かで、いちばん騒がしい。いちばんソナチネで、いちばんカンタービレ。いちばんサイレントで、いちばんトーキー。静と騒>>続きを読む

ソナチネ(1993年製作の映画)

5.0

山下清の絵画のような、ツギハギのシーンをペタペタと貼った切り絵。

ヤクザの有給休暇。自由にバイオレンスするが、上下関係や掟の束縛は厳しい。そんな連中がしがらみの巣窟を飛び出し、真っ白と真っ青な石垣島
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俺たちに明日はない(1967年製作の映画)

5.0

アメリカンニューシネマの夜明けを告げる写真機のシャッター音。滅びの予感と美学に満ちた赤く染まるクレジット、魔性の唇と裸体。世間体という皮を剥ぎ、ボニーは女に脱皮する。

男性機能が不能なクライドは社会
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真夜中のカーボーイ(1969年製作の映画)

5.0

50年以上も前に作られたことを微塵も感じさせない映画力。敬愛する井筒監督が「共感の踏み絵」と言い、高校生で影響を受けたことにも驚く。大学生で観たときは何も分からず何も感じなかった。青春は故郷を捨ててか>>続きを読む

スケアクロウ(1973年製作の映画)

5.0

暴力でしか自分を防衛できないマックス、人を笑わせる“フリ“でしか自分の存在を確かめられないライオン。カラスを脅かすカカシとカラスを笑わせるカカシ。どちらもカカシ。案山子は表情が同じ。それは自由の女神と>>続きを読む

ベルリン・天使の詩 4K レストア版(1987年製作の映画)

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PCエンジン(ゲーム機器)で『天使の詩2』という名作RPGがあった。フィールドに出たときの荒野のような音楽がたまらなく冒険心を掻き立てた。

孤独に寄り添う天使が孤独の羽に包まれる。恋は人を孤独にする
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東京画(1985年製作の映画)

5.0

小津安二郎の『東京物語』の「オープニング・クレジット」から始まるオープニング。映画の中で最も退屈で不要だと思っているオープニング・クレジットにヴェンダースが小津への想いを語る。ヴェンダースの眼を通して>>続きを読む

パリ、テキサス(1984年製作の映画)

5.0

『さすらい』を継ぐさすらい。放浪の映画作家ヴィム・ヴェンダースがロードムービーの故郷に帰る。トラヴィスが道を歩く。カメラは横から並走する。何度も。人物の歩幅、歩調に寄り添う。それだけでロードムービーに>>続きを読む

さすらい(1975年製作の映画)

5.0

ジュデマリ『Over Drive』のようなワンピースのリュディガー・フォーグラーが愛おしい。

映像はモノクロだが、ふたりの沈黙に色があり温もりがある。乾いた広野のなかに湿度がある。ヴェンダースは沈黙
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枯れ葉(2023年製作の映画)

5.0

賞味期限が切れた商品、賞味期限が切れた犬、賞味期限が切れた男。女はそれを捨てない。枯れ葉を拾い集めて温かい布団や絨毯を作るように。誰かにとって価値が終わったものは新しい価値が宿る瞬間。終わりとは、すべ>>続きを読む

まわり道 4K レストア版(1975年製作の映画)

-

旅の不自然な出逢いを自然に撮ってしまうヴェンダースという傾き者。書けない作家、売れない女優、女芸人、元ナチス党員。不自然すぎる一座が形成され、一本道を歩く。ロードムービーのようで会話劇。

主人公のモ
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都会のアリス(1973年製作の映画)

5.0

物語がありそうで無い。フィクションなのに、この2人の結末をドキドキしながら見てしまう。セリフが少ない。説明的なセリフがない。まるで絵画と音楽だけで映画を作っているような。ヴィム・ヴェンダースは言葉を使>>続きを読む

愛にイナズマ(2023年製作の映画)

5.0

女版の寅さんを観るような爽快感と人情。

前半の映画プロデューサーとの喧嘩は言葉は敬語で丁寧だが相手の心をナイフでズタズタに刺す冷戦を描き、後半では言葉は汚く罵り合うが互いの溝が埋まっていく家族喧嘩を
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PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

5.0

令和の6年間で『滑走路』と並ぶナンバーワン。『PERFECT DAYS』は光と色と音が主演の映画であり、闇と沈黙と無色の助演が主役を食う映画である。浅漬けと深漬けの両方の良さが同時にある未知の漬物に出>>続きを読む

エクスペンダブルズ ニューブラッド(2023年製作の映画)

5.0

アクションという映画言語、アクションという視覚音楽のマエストロであるスタローン。朝っぱらから大爆破と大爆笑のオンパレード。落語は人間の業を肯定し、映画は倫理の真逆を肯定する。今のご時世で不謹慎な大爆破>>続きを読む

いますぐ抱きしめたい 4Kレストア版(1988年製作の映画)

5.0

黒電話が鳴り響くオープニング。ストレンジャー・ザン・パラダイスの模倣から始まり、トップガンの甘いラブストーリーに変調する香港ノワール。

トム・クルーズよりTop Gun Anthemが似合うアンディ
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ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

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ゴジラゲドン。宇宙服のブルース・ウィルスが登場すれば拍手喝采だった。『君たちはどう生きるか』と同じ失敗。恐怖を煽るほど薄っぺらく、嘘っぽくなる。ゴジラは最小限の動きで破壊するから迫力が産まれる。初代ゴ>>続きを読む

山女(2022年製作の映画)

5.0

遠野物語の早池峰山が舞台の江戸時代。米を盗んだ父(永瀬正敏)の罪を被り村を出るが、飢饉をおさめる人柱となるため連れ戻される凛(山田杏奈)

人は力を合わせて強くなれるのに、村の呪縛に弱さを露呈する。民
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キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(2023年製作の映画)

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「物語り」としては圧倒的におもしろいが「人語り」として薄っぺらすぎる。

演技や演出が優れていようと、これでは見透かされる。

今作のテーマなら主人公はデニーロにすべきだし、なぜ愛情の深い人物(ディカ
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無法松の一生(1943年製作の映画)

5.0

映画は暗闇の芸術、銀幕はプラネタリウム。輝く星(スター)を観る場所。スタローンも阪妻も、ただ走る姿だけで観る者の人生を動かす

劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)(2023年製作の映画)

5.0

冴羽獠のコルトパイソンの銃声は声なき叫びであり、弾丸は信念

相手を殺すことが相手の尊厳を守ることもある。法を犯そうが他人からどう思われようが、信念の弾丸を貫く

高校生のとき東京に住むなら新宿しかな
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ターミナル(2004年製作の映画)

5.0

ひょんなことから羽田のターミナルで一泊することになり見返した。

「ステーション」には通勤や通学の日常の景色があり、「ターミナル」には旅という非日常の匂いが染み込んでいる。

ふと足を止めてターミナル
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フィールド・オブ・ドリームス(1989年製作の映画)

5.0

炎天下でもナイターでもない夕暮れの野球。落陽に照らされた球童たち。泥だけになって汗まみれになって遊んだ幼少の日々が蘇る。

破産しながらもケヴィン・コスナーは旅を続ける。白球という地球儀のなかにいる自
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君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

-

宮崎駿は前半が凄く、後半に尻窄みになって、それでも前半の良さで逃げ切るサイレンスズカやタップダンスシチーだが、今作は出だしから失敗している。

空襲のなか、激しい動きと大きな音で迫力を煽るが逆効果。む
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ドラゴン怒りの鉄拳(1972年製作の映画)

5.0

たった独りでアメリカン・ニューシネマを超えた

揺るぎない緊張感、はち切れんばかりの情熱、荒々しい脚本、歌舞伎の見栄、人を殺めたあとに見せる哀しみ、そして理不尽への怒りを爆発させる死への暴走

ブルー
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木枯し紋次郎 関わりござんせん(1972年製作の映画)

5.0

菅原文太が主演の木枯し紋次郎シリーズの第2弾。1972年9月公開。監督は中島貞夫。共演は市原悦子、田中邦衛という超曲者。超のつく名優。このキャスティングがトラ・トラ・トラ。幼い頃に生き別れた姉と(市原>>続きを読む

椿三十郎(1962年製作の映画)

5.0

黒澤明、三船敏郎による聖者の行進。楽しくて仕方ないのが伝わるほどカメラが踊っている。カメラが笑っている。黒澤の脂が乗り切った傑作にして、三船敏郎の生涯最高の演技。

常に芝居を打ち続ける椿三十郎を演じ
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虎の尾を踏む男達(1945年製作の映画)

5.0

戦国時代でも江戸時代でもない、平安・鎌倉の黒澤時代劇。北陸の山峰の簡素な風景と、名優たちの迫力がタイムトラベルさせてくれる。

すべての役者を食うエノケン存在感。大河内傳次郎、志村喬といった稀代の俳優
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悪い奴ほどよく眠る(1960年製作の映画)

5.0

なんてクソカッコいいオープニング。和太鼓の音にテロップが流れるだけ。なのにシビれる。歴史なのか未来なのか、黒澤明の映画には時空を超えた重力が宿る。

『隠し砦の三悪人』に続き「悪」を使う。黒澤の良心だ
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