おゆさんの映画レビュー・感想・評価

おゆ

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夜明けのすべて(2024年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

自分がケアされる存在であることを継続しながら、他人のことをケアできる可能性。
遠くの光が届くように亡き人の語りから何かを得ること。
栗田科学の仕事場の使い方の美しさ。
辞表を出す朝のソファの位置や、日
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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

生命倫理を全捨てすることで人間の業と知性の獲得を描く。
その歪みゆえに魅力的な他人の生。

ヴィクトリア朝を下敷きにしながら、
現代のエッセンスを加えたインテリアと衣装がきわめて美しい。
脳と身体の年
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ザ・ホエール(2022年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

誰かや自分自身が生き延びることに、根本的な解決はなく、単に1日ずつの偽薬にすぎない。しかしそれは悲劇ではない。
哀しくも力強く、ユーモアに溢れている。

部屋と自分の身体、二重に閉じ込められたチャーリ
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アザー・ミュージック(2019年製作の映画)

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「other music を洗練された方法で提示する」
アンダーグラウンドではなく、でも近寄りやすくはない、絶妙なバランスで「未知の」音楽との出会いを特別な経験にする。
ガラス越しに映るタワーレコード
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SHE SAID/シー・セッド その名を暴け(2022年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

沈黙と語ること。
性暴力サバイバーが感じてしまう、恥や自分を責めるような感覚、あったことを言葉にすることがどれだけ困難であるか、
胸がつぶれる思いがする。
ワインスタイン個人だけでなく、そうした心情に
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さかなのこ(2022年製作の映画)

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男女問わず、いまこの人は性別を超えたところから話してるんだな、と思う瞬間に出会うとなんだか嬉しい。
ミー坊の目にそういった類の、周りをエンパワメントする説得力が常にあってよかった。


だからこそミー
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ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

結末は最初から提示されているが、
それでも最後の「人間の」表情、
泣きながら笑っている顔のためだけにあった映画の様な気もした。
本当に窮地に立たされた時、笑うしかない、ということなのか、
宿命をある種
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GAGARINE/ガガーリン(2020年製作の映画)

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団地と宇宙のアナロジーは、「わが星」とも似ていて、人が人としての形の限界を越えていくような高揚感がある。
取り壊される団地の中に、1人ユートピアとしての宇宙船を作っていく、という筋は、身体的なリアリテ
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ハウス・オブ・グッチ(2021年製作の映画)

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終始ブラックユーモアを貫く、名家の崩壊もの。
嫁いできた女をいわゆる悪女として断罪するのではなく、
既に溺れかかっている家が見せる最後の輝きによって、
男女誰もが狂っていく、という筋がよかった。
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ラストナイト・イン・ソーホー(2021年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

ミスリードと真相との関係は、
「魂の殺人」というのがじっさいにどういうことなのか、実際の殺人に重ねて描いているのかなと思った。

女性性の描き方、痛みの描き方には繊細さがないなと思うところもある。
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の・ようなもの(1981年製作の映画)

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できるだけユーモラスに生きること。
人生の栄光の時間はあまりにも遠く短く、曖昧な時間はとても長い。

道中づけと川べりのビアホール。
団地を一つの動態として捉えるカメラワーク。

エリザベスと志ん魚の
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ワン・デイ 23年のラブストーリー(2011年製作の映画)

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お互いなんて豊かな人生だろうと思った。
人生のあらゆる季節で、いつも胸に浮かぶ伴走者がいること。
こんな関係を築いているならそれが恋愛か友情かなんてどうでもいいなと思う。

あんなにのらりくらりと生き
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スパイの妻(2020年製作の映画)

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人間に光を当て、影で浮かび上がらせる効果の美しさ。洋服が人の皮膚となり鎧となり、内側から発光したようにその人に似合っている。光と服は人間の尊厳に関わることを強く思い出させる。

聡子と福原がそれぞれ相
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コンフィデンスマンJP プリンセス編(2020年製作の映画)

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騙し合いという嘘と、そもそも映画の中のフィクションという嘘が重なることで、逆に本当のものが浮かび上がってくるように感じるのが魅力だなと思う。
役者の生命力や躍動感、表情の真摯さ、相手を見る目の優しさ、
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フランシス・ハ(2012年製作の映画)

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頭脳的にここがいい!というよりエモーショナルに好きな映画。
自分もいい歳なので、これ共感しちゃ駄目なんだろうな〜というところもありつつ、傷を負いながら観た。

いわゆる「夢との折り合いをつける」年齢は
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音楽(2019年製作の映画)

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ピョコンピョコンとした歩き方、ナンセンスな会話、走りゆく背景、研二の無言、観る人はユーモアで包まれながら音が流れ出すのをひたすらに待ちつづける。


何かが始まったときの初期衝動を、ロトスコープという
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We Margiela マルジェラと私たち(2017年製作の映画)

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マルタン・マルジェラという特異な組織が、成長して瓦解するまでの物語。
「服が服を作り出す」というのは、物理的・精神的、両方の意味でマルジェラらしいなと思った。
脱構築、未完成、というのは抽象的な議論で
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寝ても覚めても(2018年製作の映画)

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自然と人工の風景と、高速道路や川の速度が、物語の中で人々の歩みとともに流れていく。その中には様々な時間の速度が刻み込まれている。
2人のための物語であると同時に、その周囲の人間、川や家、インフラなど、
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ブンミおじさんの森(2010年製作の映画)

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ブンミおじさんが今世で作り上げてきた1つの世界、人間関係が展開される中で入り込む幻想的な神話や原始の世界は彼の前世なのか。
自分の生がいくつもの旅を経ていることを認識したことは、今世で失ったものに対す
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恋する惑星(1994年製作の映画)

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恋人になりそうな2人が向かい合う場面は少なくて、それぞれが孤独なうちに、誰かを想うということが何度も描かれる。
その果ての行動は独りよがりでも、狂気でもあるかもしれないが、見ているとなんとなくそれは美
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四月の永い夢(2017年製作の映画)

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「人生はなにかを獲得する過程ではなく、なにかを失い(喪い)続ける」、それは悲劇ではなく、だからこそ今持つものを慈しみ大切にできるのだ、そう言われ、完全には飲み込むことができなくても、そのことへの覚悟を>>続きを読む

ジョゼと虎と魚たち(2003年製作の映画)

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人物誰もが、ものすごく未熟なところと、突き放したような達観がある。
キスシーンなどの身体表現は過剰なのに、本当は何を考えていたのか、登場人物の感情の交錯が宙に浮いている。それが美しくも、物足りなくも、
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ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男(2016年製作の映画)

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ショーの準備と本番と、手のかかった庭と部屋。
人生を律しつつ楽しみ、毎シーズン新しいものを生み出すことの、途方もなさを感じる。
高度な技術と、ファブリックへの情熱、素材や色のバランスの強調。
服はアー
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勝手にふるえてろ(2017年製作の映画)

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映画全体が、現実と並走しながら時々恐ろしくずれていくヨシカの妄想一色の中で、ラスト、玄関先での奇跡は大げさだけど世界を変える。一人称の世界から二人称の世界へ。
その後、一瞬暗転してエンドロールという流
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ノクターナル・アニマルズ(2016年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

20年前に別れた元夫から届いた小説を読み進めるうち、20年前の様々な痛みに思い当たる物語。現在と20年前の回想、小説世界が平行して進められていく。
一番衝撃的なのは小説世界の酷さ、後味の悪さである。例
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ブレードランナー ファイナル・カット(2007年製作の映画)

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単数、というモチーフが多いような気がした。冒頭の眼、一つの眼としての写真、一角獣、都市は全体が見渡せず、いつでも一つの道の中を人が行きかう。
魑魅魍魎の世界の中で彷徨い、どこまでも奥にはいりこんでいけ
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ソフィア・コッポラの椿姫(2016年製作の映画)

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ヴァレンティノの衣装。
服が主役にならないバランスの優雅さでもって、所作に細やかに形を変え、歌手の身体を魅力的に祝福する。
メゾンでなければ出せないだろう絶妙な色、作り込みが沢山あり胸が熱くなる。
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何者(2016年製作の映画)

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出てくる人の着衣、リクルートスーツ75%くらいなのではないかという稀有な映画。

主人公が自分の人生を生きていこうとする、感化の物語のようではあるけれど、6人のそれぞれの価値観は、どれも間違っていると
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アメリ(2001年製作の映画)

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証明写真機の匿名性(撮る側も、撮られる側も)、アメリが盲人を案内するシーン、などなど「見えない」装置、モチーフが形を変えて出てきていて興味深い。
それらと、アメリの恋の盲目性(一途さ)がシンクロしてい
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グランド・ブダペスト・ホテル(2014年製作の映画)

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中世の写本と、現代のポップを混合したような魔力。
度々でてくるコミカルな残酷さは、個人的には苦手だが、ゆっくりと回想する元支配人の人生の渋みと対照的で、必要な毒なのかもしれない。

現在のホテルは汚れ
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ゆれる(2006年製作の映画)

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橋は境界にかかる。
生と死の、都会と田舎の、男女の、或いは兄弟の、存在していた縁が切られ、作られるはずがなかった縁を作る。

自分が目撃した光景と、他人が目撃した光景が絶望的に隔たっていること、
しか
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たかが世界の終わり(2016年製作の映画)

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最悪になってはじめて、輪郭を取り戻すものがある。
言葉ではなく、振る舞いや眼差しに愛がかろうじて宿っていますように、と願わずにいられない。

きわめてよいふうけい(2004年製作の映画)

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復活した中平卓馬の、日常と追憶を淡々と写す。

強いイメージというものは存在するけれど、写真が1枚1枚の連続であること、作家の生というものはその連続の中でしか現れないことを教えてくれる。
大きく折れ目
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エヴォリューション(2015年製作の映画)

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無意識の中の、幾つもの層にある身体感覚に語りかけるような気持ち悪さと恍惚感。

未分化な少年と成人女性の間の性を感じさせる関係。拘束や異物を孕むことに対する生理的な恐怖。皮膚の歪みと破断。

これらが
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