春イコ

ラブライブ!サンシャイン!!の春イコのレビュー・感想・評価

ラブライブ!サンシャイン!!(2016年製作のアニメ)
5.0
大好きです。
Aqoursは終わりから始まり、何度も立ち上がる物語で、その物語を彼女たちが獲得する物語です。
μ'sから受け取ったものを正当に引き継ぐ続編だと感じました。

0から1へ、無から有へ繋げ、無に有を見出す(これは2期2話で明示されますが)。
音ノ木坂に何も残さなかったμ'sでしたが、その思想や意思はたしかに後世に息づいています。それ自体が何もないところに個性を見つけていく継承を感じます。
しかしμ'sの礎はありながら奇跡を起こすことはできないAqoursと普通怪獣の千歌ちゃんは現実の難しさに向き合いながら自分らしい輝きは何だろうと探し追い求めます。

印象的なのは12話。
μ'sがμ'sを終わらせる決意をした砂浜で、「Dear 穂乃果さん」と言葉を贈る千歌ちゃんがμ'sらしさを解釈定義しAqoursらしさを定義し、これから向かう方向を決意し全員でジャンプしたこと。μ'sが涙した駅のホームで千歌ちゃんが羽根を受け取ったこと。これが終わりから始まる物語を象徴する場面だと感じ、涙が出ます。
13話のライブでミュージカル風にこれまでの経緯を歌い踊る場面は、まさに彼女たちが積み上げてきた日々が物語になった瞬間です。「悔しい」と叫ぶ千歌ちゃんの姿に、千歌ちゃんの母が表情を変えたことも印象的です。

11話も素晴らしかったです。
初めはピアノへのスランプで沼津を訪れた梨子ちゃんがAqoursに入って、その日々や沼津での暮らし、空と海の中で聴こえたメロディのインスピレーションを得ながらピアノと向き合う気持ちを復活させていきます。千歌ちゃんはその想いに気づき、ピアノのコンクールに出るよう梨子ちゃんに諭します。それはラブライブの日程と同じ日です。梨子ちゃんはピアノのコンクール、梨子ちゃん不在の8人のAqoursはラブライブへ。これはμ'sではなし得なかったグループの形です。今ここにいなくても、遠く離れても9人は9人の絆を保っていける。同時に全員の想いが叶う。何か一つを選ぶことでどちらかを諦めないために。両方掴みにいく。この思想は2期にも息づいていますし、「想いよひとつになれ」という曲にも込められています。そしてこの曲のメロディは梨子ちゃんが海で聴いたあのメロディでした。

μ'sは雨を止ませることができた。Aqoursは雨を止ませることはできない。しかし、雨の中で笑い、雨の後の太陽を信じ、そこに未来への希望を見ることができる。アニメの中で太陽の光が常に描かれます。綺麗な背景が強く印象に残ります。μ'sが残したスクールアイドルの素晴らしさ、限られた時間の中で「人生を愛する」(love live)ことの輝き。それをたくさんの人に開けた形で体現した「sunny day song」。その太陽の光は誰のもとにも平等に降り注ぎます。もちろんAqoursのもとにも。その光を受け取って、自ら輝こうとする。そして砂浜で得た気づきによって千歌ちゃんやAqoursは自分の進む道を見つけ、羽根を受け取ります。μ'sがいない(0)今でも、μ'sから受け取ったたしかに残るもの(1)を胸に抱いて歩いていけると決意したからこそ、千歌ちゃんは部屋に貼ってあったμ'sのポスターを剥がしました。

地元を愛する気持ちと、終わりに向かうものへの抵抗と許容。その物語を得ていく青春の話。大好きです。
春イコ

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