改名した三島こねこ

輪るピングドラムの改名した三島こねこのレビュー・感想・評価

輪るピングドラム(2011年製作のアニメ)
5.0
<概説>

妹の命を救いたければピングドラムを集めろ!
唐突すぎる大ピンチと正体不明すぎる珍物体。謎が謎をよぶ混乱とペンギンの群の中で、兄弟は逃げ続けてきた過去に追いつかれる。奇才幾原邦彦によるカルトアニメーション。

<感想>

「きっと何者にもなれないお前たちに告げる」

映画をそれなりに観るようになってから原点であるアニメーション作品に立ち返り。衝撃を受けることに。

この時点で『インセプション』や『死刑台のエレベーター』といった閉じた人間関係の作品に惹かれていました。

本作もまさにそういったミニマムな関係性に終始している作品で、主要登場人物は両の手で足りるほど。しかしこの関係性が異様なほどに複雑で、しかも隠蔽されたところがあるので最後まで全容が掴めない。

そしてようやくその全容が掴めたときにはもうすべてが手遅れで、その場に観客は立ち尽くすのです。

最初は敵のようであった彼女。
最初は味方のようであった彼。

誰もかれもが何者にもなれないまま、過去からさえ一歩も進めていやしない。どうしようもないほど胸が苦しく、この苦しさゆえに結末に顔をくしゃくしゃに歪めました。

どうか兄弟に救いがありますように。

どうか彼等が何者かになれますように。

祈りながら今日もカレーを作るのです。