<概説>
妹の命を救いたければピングドラムを集めろ!
唐突すぎる大ピンチと正体不明すぎる珍物体。謎が謎をよぶ混乱とペンギンの群の中で、兄弟は逃げ続けてきた過去に追いつかれる。奇才幾原邦彦によるカルトアニメーション。
<感想>
「きっと何者にもなれないお前たちに告げる」
映画をそれなりに観るようになってから原点であるアニメーション作品に立ち返り。衝撃を受けることに。
この時点で『インセプション』や『死刑台のエレベーター』といった閉じた人間関係の作品に惹かれていました。
本作もまさにそういったミニマムな関係性に終始している作品で、主要登場人物は両の手で足りるほど。しかしこの関係性が異様なほどに複雑で、しかも隠蔽されたところがあるので最後まで全容が掴めない。
そしてようやくその全容が掴めたときにはもうすべてが手遅れで、その場に観客は立ち尽くすのです。
最初は敵のようであった彼女。
最初は味方のようであった彼。
誰もかれもが何者にもなれないまま、過去からさえ一歩も進めていやしない。どうしようもないほど胸が苦しく、この苦しさゆえに結末に顔をくしゃくしゃに歪めました。
どうか兄弟に救いがありますように。
どうか彼等が何者かになれますように。
祈りながら今日もカレーを作るのです。