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未来少年コナンの夜のレビュー・感想・評価

未来少年コナン(1978年製作のアニメ)
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前知識なしに見始めたのでコナンが「未来少年」とは思えないほどの野蛮さを発揮することに驚いた。

ラピュタを含むその後のジブリ作品を彷彿とさせる展開やモチーフの散りばめられた本作は、なんと宮崎駿の愛弟子である庵野の作品まで思い起こさせる。これは『エヴァ』のセントラルドグマじゃないか、ゼーレとゲンドウの構図じゃないか、などなど想起することが多かった。ただ、『コナン』には水と窒息のモチーフが演出上何度も出てきて、それは『カリオストロの城』でも少し登場するが、その後の作品から姿を消している。単にスリルを醸すのに便利だったから頻用していただけだろうか。

それにしてもこの作品には近年稀に見るほどのクズキャラクターが多い。初期のジムシーですら登場時にはかなり苛々させられて、早く同情的な過去のエピソードを出してくれと思っていたが、どのキャラクターもコナンの振る舞いを見て回心していくので、そういう話かと気付くのに多少の時間が必要だった。オウロなんかは回心の過程は省略されていて結果しか示されなかったが。

この回心の過程で過去の回想まで含めながら劇的な変化を遂げるのはやはりモンスリーで、20話近く悪役だったのに突然、津波にトラウマを持つ孤独な少女のなれの果てだったのだということが示され、たった一話で役どころが反転するところはドラマティックだった。途中から「もう、ばかね」「コナン、あなたって子は!」「なんですって!」を繰り返すbotと化すが、それを差し置いても、ダイスと並んで最も劇的な変化を遂げる脇役だった。

最後に、農耕・土着・大地・家的なものと社会主義の繋がりのようなものを終始感じさせる作りで、のんびり見られるアニメの割に思想性が強いという印象を受けた。それでも、例えば船でチートの村に行って物々交換をする場面なんかは貿易がどのような理由から始まるのかの一例を子どもにもわかるように示していて、アニメとして教育的だと感じる箇所も多かった。もはや幼年ではない私にとっては、コナンを見ていると、性欲の芽生えるよりも前に異性を好きになる気持ちを思い出させられて懐かしい気がした。
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