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未来少年コナンの青ののレビュー・感想・評価

未来少年コナン(1978年製作のアニメ)
5.0
【働く、食べる、走る、コケる、飛ぶ!】

スタジオジブリ(宮崎駿監督)作品と言えば『となりのトトロ』や『千と千尋の神隠し』etc…かもしれないが、やはり氏の原点にして至高は今作かもしれない。

1968年『太陽の王子ホルスの大冒険』場面設計、原画
1972年『パンダコパンダ』原案、脚本、原画
1978年『未来少年コナン』監督、演出、原画
1979年『ルパン三世 カリオストロの城』監督、脚本
そして『風の谷のナウシカ』を足がかりにスタジオジブリ設立。

脂の乗り切った壮年宮崎駿氏が初期衝動の限りを尽くした作品は、実はここまでじゃないかと思う。
もちろん、以降の作品も傑作揃いだが「なんやかんやビートルズもストーンズも初期に立ち返るよね」的な、迸る(ほとばしる)熱情はこの比ではない。

大塚康生氏をアニメーションの師と仰ぎ、高畑勲氏とは博識と哲学を競い昇華の先へ導き合った。
撮影技術や色彩数、画像の美麗さで言えば、近年の作品に劣るのは否めないが、いわゆる「ジブリっぽさ」とか「とにかく動く」を構築したのはこの三氏だ(宮崎駿 演出、大塚康生 作画監督、高畑勲 一部絵コンテ)。
※大塚康生 ルパン3世シリーズ作画、作画監督

第一話、アバンから僅か数分で世界観とコナンとオジイの境遇や、コナンの驚異的なスーパーキャラ等の説明演出は神がかり的だ。
また、アフターアースにおけるインダストリアとハイハーバーの二極化に見られる社会性とメッセージ。
ありそうで無さそうな無骨でいてスタイリッシュなメカたち。
ジムシーとダイスのコミカルなかけあい。
そしてなにより、コナンとラナの尊いまでの純愛。
極論だが以降の監督作品は、今作のパターンをセルフリメイクしている感がある。
宮崎駿作品に共通の、とにかく走らせる→たまにコケる。果敢に立ち上がる→そのためには食事がだいじ(ジブリ飯)→そのためには労働→走る、そして…飛ぶ!
次点で傑作と呼ばれる(かなり個人的に)『カリオストロの城』は今作の焼き直しにも見える。
具体的には、インダストリアにおけるラナ奪取のエピソードはまんまカリ城だ。

そして、今作を見てアニメーターや業界に踏み入れたクリエイターも数多いと聞く。
アニメ(漫画原作)『映像研には手を出すな!』は、正にその「こんなんを描きたかったんです」発露な作品だ。

よもすれば『見ろ見ろマウント』になりがちだが、宮崎駿イズム遺伝子の派生作品を並べるに辺り、その原点とは?となった時に今作は外せない。
ただの古くさい、古典アニメと言うだけで埋もれてしまうのが惜しい。

叶うなら、再び金ローというか、ゴールデンタイムで地上波放送をして欲しい(ジムシーの喫煙シーンはアウトか?)。


ちなみに劇場版もありますが、雑な編集版なので見なくていいかもです。
そのサムネ脇にある「監督:佐藤肇」はその編集版監督のこと。

また『未来少年コナン2 タイガアドベンチャー』と言う作品もありますが、名前だけ借用した、まったく別作品です。
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