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攻殻機動隊 SAC_2045 シーズン1のTaiRaのレビュー・感想・評価

攻殻機動隊 SAC_2045 シーズン1(2020年製作のアニメ)
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神山「攻殻」の良さが出る前に終わった感じで消化不良な気はするが、それなりに面白い。

ビジュアルが荒牧作品の3DCGになったが、日本製CGアニメ的なチープさをやはり感じる。正直、作画でやって欲しかった。イリヤ・クブシノブによるキャラデザは素直に可愛いと思うので尚更。イリヤのイラストから感じる魅力は本編では減退してしまっているし。一応今回の技法でも、モーション・キャプチャーによる格闘描写や3Dならではのカメラワークなど、良い点がない訳ではない。ストーリーはまず『1984年』をキーにして、背景に持続可能戦争を配置しながら、本題は新人類=ポスト・ヒューマンの話で、これは『幼年期の終わり』的なもの。シーズン1前半はその存在を知るまでの戦闘アクションがメイン、後半はその該当者の捜査・対峙が描かれる。その流れでポスト・ヒューマンがただのバグった変異体ではなく、人類を超えた存在なのではと想起させる。2045年問題(シンギュラリティ)をタイトルに持って来たのが段々分かる構成。ポスト・ヒューマンが単なる悪役でないのはラスト2話ではっきり描写されるので、シーズン2以降はより「倫理的な」問題がテーマになると思う。宮台真司も言っていたが、ジョージ・オーウェルの批判対象が全体主義だったのに対し、神山健治は「劣化した民主主義の全体主義的機能」を批判する。民主主義の劣化とは要するに、人間の倫理的な劣化によってもたらされるもので、ポスト・ヒューマンが人間よりも「倫理的」である事が、今回の作品におけるテーマになる。向こう側へシンパシーを持ってしまうのがヒューマンそのものであるトグサなのが良い捻り。旧人類と新人類の境界に立たされる公安9課というのが今後展開されるかと。テーマとしては今日的でそれなりに面白いと思う。12話という話数なのでしょうがないが、9課メンバーの個性がそれぞれ立っていた神山版の良さは出し切れず。パズやボーマなんてほぼ喋ってないし。その代わりに新キャラ江崎プリンが活躍するが、彼女のアニメっぽいキャラ性と3DCGによる生っぽい表現とが噛み合ってないのでイマイチ乗り切れない。全体的にシーズン1だけでは評価保留って印象。
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