シズヲ

サムライチャンプルーのシズヲのレビュー・感想・評価

サムライチャンプルー(2004年製作のアニメ)
4.4
「ガタガタ言うな。黙って見やがれ」

異色ミクスチャー時代劇アニメ。ヒップホップのカルチャーを取り込んだ作風、金髪の若者やヒューマンビートボクサーなどの時代錯誤なキャラクター、「マジで〜」といったチャラい言葉使いなど、時代考証そっちのけの珍妙にしてクールな描写が飛び交う。Nujabesによる気だるげなサウンドが偉大。

骨格だけ見るとかなりぶっ飛んだ内容のように思えるものの(実際そういう側面もあるけど)、実際のところ大分殺伐としている。主役三人が緩い旅路を繰り広げる中で常に死や暴力の匂いが付き纏い、多くを語らず時に結末さえも“断絶”させるような構成が独特の緊張感を生み出している。スピーディーかつスタイリッシュな殺陣も秀逸で、カポエイラを取り込んだアクションも独創的で面白い。しかし暴力描写も相俟って、流麗という以上に命の駆け引きの泥臭さに満ちている。

『カウボーイビバップ』とスタッフが共通しているので全体の雰囲気も近く、疑似家族的な主人公達やほぼ一話完結の構成、制作陣の趣味を盛り込んだ内容などを継承している。シリアスとシュールの振れ幅がめちゃめちゃ著しく、荒涼とした話を展開したかと思えば突然野球の話をおっ始めたりと中々に自由。埋蔵金のエピソードのパロディ性・不条理性は殆ど『スペース☆ダンディ』の前身めいている。

奇妙なテンポで繰り広げられる物語だけど、そんな中で付かず離れずの距離感を保ちながらつるんでいく主役三人の関係が次第に愛おしくなってくる。旅路の終焉がじわじわと迫ってくる終盤の寂寥感は『ビバップ』とはまた別のベクトルで切なくなる。それだけにラストの何気無くも清々しい着地が味わい深い。
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