彦次郎

EX-ARM エクスアームの彦次郎のレビュー・感想・評価

EX-ARM エクスアーム(2021年製作のアニメ)
1.5
交通事故で目覚めると2030年脳のみの兵器「EX-ARM“No.00-α”」となった夏目 アキラが警視庁の「EX-ARM対策課」で女性巡査上園美波や女性アンドロイドアロマ達と事件を解決していく”世界のSFに宣戦布告!”した伝説のアニメ。元は作画古味慎也氏、原作HiRock氏の漫画作品で斬新な設定とアクションと色気が作画である古味慎也氏の超美麗な絵で表現されたSF作品です。このクオリティの漫画が原作であるならアニメになったら相当な傑作になるであろうと誰もが容易に想像できますが2021年に放映された本作は別の意味で世界に宣戦布告したものでした。
ご機嫌な英語の歌に乗ってCGアクションが披露されるOPでキャラの使いまわし感が嫌な予感を感じさせますが本編でも全く予感を裏切りません。恐らくはCGを使うことでアクション部分の作画負担を減らすということでしょうが主要キャラ以外はCGでキャラを作るのが却って負担という極めて合理的な判断のもと2Dアニメ作画と3DCGキャラが同時に画面に映るという斬新なスタイルになっています。アキラの兄(2D)が表情豊かで会話するのに主役であるアキラが目をガン開きにして会話している光景から衝撃を受けた諸兄は多いことでしょう。アキラだけでなく他の主要キャラも基本的には無表情(唯一怪しげなメガネをかけている近藤は目が表現されていないので違和感が少なく見える)という『ゴルゴ13』でも成しえなかったハードボイルドと言いたいところですが声優陣の熱演により声は必死で表情に生気がないという『世にも奇妙な物語』の世界に迷い込んだかのような世界観は違った意味でSFしていたと思います。
興味のある方は原作1話と本作1話を比較していただきたいですがアロマの動きが傀儡みたいになっていてなぜか静止画である漫画の迫力の欠片もないという不思議なことになっています。またこちらの方は公共放送ということでやむを得ないでしょうがお色気部分が悉く削除。仮想空間でのアキラたちも光に包まれていてスチームサウナで会話しているかのようなこれまたシュールの極みでした。
とはいえ作画だけ批判して真に面白いモノを貶めるのは公平に欠けるので他の美点も見たいと思います。主役は脳だけというのはかなり斬新ですが人間の体のパーツを模し装着することで発動可能なEX-ARMという設定は魅力的。人間爆弾テロや仮想世界で学園モノが始まったり、EX-ARMそのものがオークションにかけられて黒幕が意外な人物だったりと話自体も悪くないです。ただ音がショボかったり話のテンポに違和感があったりしたのは事実。壮大に収まりそうな話を12話で決着をつけたのは凄いです。
決着と言えば本作放映中に原作の続編『EX-ARM EXA(エクスアームエクサ) 』が連載打ち切りにて完結という奇怪な出来事がありました。偶然なのか全ては闇の中ですが現在(2024年1月30日)『セクシー田中さん』の原作者であられる芦原妃名子さんが自死によりお亡くなりになられた件がなぜか頭によぎってしまいました。視聴者が言うのもおこがましいですが本作のスタッフの方々は原作者である古味慎也先生に陳謝すべきでは…。

余談。舞台が2030年ということでなんともう一方の伝説のアニメ『GIBIATE』と設定は同年という一奇。世界観的に無理でしょうがコラボしてくれたら最高にキテいる作品がブチ上がったのではと妄想してしまいました。
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