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ゴジラ S.P <シンギュラポイント>のHalowのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

円城塔の初期のSF小説をシンプルにしてゴジラのプロットに乗せたようなアニメ。
メインとなるSF設定・ロジックはさすがに面白いのだが、分かりやすさを重視したためか映えのない説明描写が長くなりすぎているように感じた。過剰に親切になりすぎて分かりきっている話を解説する場面も多い。
円城塔の小説では、そこら辺を配慮してか読者を煙に撒くような論理の飛躍や捻くれた衒学、前衛性があって説明の中にも動きを感じられるのだが、ゴジラspではそれらの要素もやはり分かりやすくするためか冒頭数話以降消えてしまった。

また、アーキタイプや破局といった既存の物理現象すら変えてしまう不可思議なものの結果として現れるのが、ゴジラという単純な暴力装置なのも釣り合っていないように感じた。
そもそも「怪獣の出現→調査→解決方法の発見→解決」という怪獣ものお約束の直線的なプロット構造自体が魅力を削いでいるのではという気もしている。

ただSF的なロジックへの回答と物語的解決が一体となった最終話のクライマックスには興奮を覚えたし、エモーショナルな語りも健在だったので決して質の低いアニメだとは思わない。

追記
この作品がゴジラそのものを批評しているという見方もあると思う。その場合、ペロ2・ジェットジャガーの進化の過程とゴジラシリーズを重ね合わせて「ゴジラとは自己参照と自己更新を繰り返し生まれ変わり続けることで、行き止まり(破局)を回避する作品群だ」ということになるのだろう。
ただどこまでそれが意識されているのかは不明だし、この解釈に広がりもなさそうなのであくまで副次的なものと考えた方がいい気がしている。
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