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たまこまーけっとのEegikのネタバレレビュー・内容・結末

たまこまーけっと(2013年製作のアニメ)
4.5

このレビューはネタバレを含みます


最近、『告白実行委員会』とか、画のクオリティがあまり高くないアニメを観ていたので、京アニ&山田尚子の作画・絵コンテ・演出・美術がレべち過ぎて逆に引いてしまう。マジですげぇわ。

あとOPアニメーションのコンテも良すぎる。OPはたまこメインでのダンスMVチックで、音ハメが素晴らしい。微妙に遅取りする感じとか、キャラ動作とカメラ(カット割り)動作での音ハメのバランスとか完璧。EDも言わずもがな最高。『One Last Kiss』のシンエヴァPVで書いたように、いかにダンスとして質が高いかを語るnoteを書きたくなっちゃう。


3話 史織ちゃん回
史織の心理を1話かけて丁寧に描く回だが、彼女のモノローグを一切あらわにせず、動作の芝居だけで描ききってしまうのがとても良かった。
たまこと史織はどちらも髪色・髪型が似ていて、どちらも眼鏡を掛けることもあり、かなりキャラデザが近しい。銭湯シーンでは裸眼の状態でさらに顔が似ているとわかる。対照的な性格を描くにあたって、あえて外見を寄せにいく手法はテクニックとしてあるのかなぁと思った。


第4話~第10話まで

4・9話で扱われる小学生の妹:あんこの恋愛譚は、『かみちゅ!』の弟くんの逃避行回を思い出す。
女子主人公が親しみやすく天真爛漫でややおバカなキャラであるときに、相対的にめっちゃしっかり者の妹がアニメではいがち。『プリパラ』ののんとかね。山田尚子・京アニでいったらまず『けいおん!』を挙げるべきなのだろうけれど。

5話の臨海合宿回もめっちゃ好き。夏サイコー!

山田尚子特有の脚・足・膝裏だけを映す(語らせる)カットを観ていると、これって『ラブ&ポップ』『シン・ウルトラマン』での庵野秀明の女体フェチアングルとほとんど同じでは……? と思う。人類の身体に関する文化的コードが今よりちょっとズレていたら、山田尚子のフェチ演出も庵野秀明と同じくらいにバッシングを受けていただろう(それともすでに受けている?)
まぁ実写とアニメではだいぶ違うだろうけど。



たまこの友達の、直角と梁と工具が好きな子がめっちゃ好みっぽい。『やくならマグカップも』の直子ちゃんみたいな。ステロタイプな女子の趣味からは逸脱した、独自の嗜好と価値観を持っている自由なキャラクターがタイプ。新学期の自己紹介で「直角が好きです」なんて宣言されたら惚れるしかないでしょう。

(それぞれの好きなものを叫ぼう)「直角~~~!!!」
「カナヅチより軽いものは持てません」
牧野かんなさん好きすぎる・・・・・・(泳げないのってそういうことなのか)
無表情マイペースキャラといえばミリマスの真壁瑞樹さんも思い出す。ド好みの系譜。あのよくやる手指でキツネみたいなのをつくるポーズ真似したくなる。
CVは『ゆゆゆ』のにぼっしーの長妻樹里さん。


序盤ではあの鳥:デラちゃんが邪魔だなぁと思ってたけど、慣れてきたのか、チョイちゃんが来たからなのか、受け入れられるようになってきた。登場人物がデラの身体を持って伸ばしたり振り回したりすることで、彼の重さが伝わってきて良い。それでようやくこのアニメ内での実在感を見いだせるというか。
こういう男性精神のギャグ要因マスコットキャラの既視感は『BLEACH』のコンだったわ。


第11話
「良い柱使ってる!」「構造が気になる」かんなさん好きすぎる。

「海の向こうの国の王子」の妃の座より、「小学生の頃からコツコツ貯めていた商店街のポイントカード景品のメダル」のほうが嬉しいたまこ。その両者が合流してたまこの前に現れる(差し出される)ラスト。

「餅屋の娘」設定といいヘテロ幼馴染(こっちも「餅屋の息子」)持ちといい商店街の愛されっ子設定といい、ものすごく保守的な話ではあった。そういうストーリーの終盤で、保守的な共同体からの脱却を促すのがリベラル的なナニカではなく、異国のまた別の保守的な共同体との邂逅である、というのはなかなか良い。「王家の妃は首筋にほくろがある」設定といい、それが亡き母親とお揃いである設定といい、保守思想が徹底しているので逆に信頼できる。

そういや、第1話が年末から年明け、第2話が2月(バレンタイン)……で、全12話がそのまま1年間に対応しているんだな。こういう構成のTVアニメ/ドラマってよくありそうだけど他に思いつかない。


第12話
メチャ・モチマッヅィは草wwwww
このアニメのこういうくだらないギャグ普通に好きなんだけど、考えてみれば「名前」というのも本人の意志で決められず、親や先祖から不可避に受け継がされる父権性の象徴でもあるから、それを理由に「名前を変えてから出直してこい!」と相手方の〈父〉に言われるのは理不尽であり、単なるギャグ要素にとどまらないんだな・・・と感心した。
そもそも「たまこ」や「あんこ」「まめだい」「ふく」それに「かんな」とかも運命付けられた名前だからなぁ。


しおり「三角関係??」
かんな「……いや、ぜんぜん図形になってないんじゃないかな」(両手で四角いカメラを作って覗き込みながら)
いいですね~~(かんなちゃん全いいねbot)

たまこが商店街の皆さんを名前でなく「さしみ屋さん」「お花屋さん」と店名・職種で呼ぶの、コルタサル『南部高速道路』でまわりの人々を乗ってる車種で呼ぶやつみたいだ。どちらも商業的な記号に基づく共同体だが、その歴史性が正反対なのも面白い。

かんなさんの台詞
「……土台から崩れたね」
「あれ……? ネタだったのに……」


おわり!!! いい最終回だった!!! いい作品だった!!!
いやぁ~~最終話は特に絵コンテがバチバチに決まってて鳥肌立った。デラをたまこが追いかける一連のくだりとか。


最後までみるとデラ好きになっちゃうわ~~~ もち蔵とたまこをつなぐ糸電話より太い架け橋の役目でもあったのかお前。
凡庸な読みだけど、彼が共同体へ参入することで物語が始まる異邦人ポジションとして、デラは視聴者の換喩でもある。


1話を(1年ぶりくらいに)再び見返した。やっぱり初見だとデラが語り手でキモいし世界観の把握に戸惑うよこれ。商店街の人たちのキャラも単純に多いしで、不親切な作りやなぁ。
デラが花屋の段ボールから出てきたのとか、たまこが商店街のポイント貯めてるのとか、終盤に向けてのいろいろがはられていたんだな。

2話バレンタイン回、みどりのたまこへの同性愛がここまでがっつり描かれていたんだな……めっちゃ切ない。

『たまこラブストーリー』をようやく観れるが、もち蔵だけじゃなく、みどりの恋の行方はどうなるんだ・・・
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