空化

無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ 第1クールの空化のレビュー・感想・評価

1.0
いや~~酷いアニメでした。主に脚本が。
二期の制作決定ニュースを見て一部が湧いていたので気になり、作業用動画兼なろう系履修として全23話視聴。


シンプルにキャラクター設定と主人公周りは無しが終わってます。それでこの話は終了です。もう少し続けます。
無職40歳引きこもりニートがトラックに轢かれて異世界転生、ここから普通の「なろう系」と違う展開が待っているから面白いと評価されるのかと思いきや滅茶苦茶テンプレ。調べてみたら「異世界転生」のパイオニア的作品であるらしい。
原作ファンにとっては嬉しいアニメ化かもしれないがアニメ視聴者にとっては苦痛だった。

赤子で転生するも精神年齢は40歳なので幼少期から勉強を重ねて魔法の習熟に努めて、無詠唱魔法を使えるようになる。結局そのあと、幼馴染も出来るようになる。でも周囲からは尊敬の眼差しで見られる。なんで? でも主人公(自分)を尊敬してくれるのを見てオタク君は気持ちよくなっちゃう事だろう。

その後も魔法に長けた主人公は、周囲のキャラクターがとてつもなくアホなのも手伝って魔法使い兼チームの頭脳役として活躍します。対して頭の良い作戦や交渉もしてないのに、周りがどんどん感服していくのを見てオタク君は気持ちよくなっちゃう事だろう。

精神年齢40歳の男性が9歳のパンツのぞき見するのマジでキチ~~~。無理。
ガワが7歳だからといって中身は40歳の男です。そんなの許されるわけないじゃん。
その後も主人公は度々セクハラ、覗き、下着泥棒を重ねる。
異世界転生が文庫本として刊行されたのが2014年。そしてアニメ化が2021年。
これは他作品でも度々言及するが、リメイク・メディア化するにあたって性暴力・差別的表現をそのまま取り入れるのは原作リスペクトではない。
原作でそういった表現があるのは避けられない事実だし、その表現のカテゴリ(分類・場)・時代では一定は許容されるモノかもしれない。
しかしこの女性の地位向上を目指す・実現しようとする現代において作品として送り出すにあたっては相応しい編集を行う必要があるのは明らかだ。
OVAなどファンのみが楽しめるカテゴリでそういった表現をするのは、表現自体は正しくないがある程度許容はされるべきだと思う。
ただTVアニメやゲームとして誰もが触れられるコンテンツとして世に送り出すときは製作側も受け手側も作品の表現を厳しく精査しなければいけない。
そういった配慮が見られない作品でもあった。

引いたのは主人公によって引き起こされた問題がいつの間にか主人公の原因ではなくなり相手に移り、相手が謝罪してそれを主人公が受け入れる話。2回ぐらいあった気がする。
異世界に行ってまで問題から目を背けて、さらに異世界ではいい事に責任を負わないまま人生を歩もうと言うのか。なんと都合のいい……そういう話なんでしょうけど。大いなる力には大いなる責任が伴う。至言だろ。

そんでオタクくんが好きそうなセリフもありましたね。
これまで過去に引き起こした虐殺が原因(本当は呪いが原因)で恐れ・差別され続けていた部族のキャラに対して神様(ハガレンにおける賢者の門の番人みたいな奴)がこう話す。

「(呪いが解け始めているから)あとはキャラの努力次第だろうねえ」



はい! 出ました!

社会は平等であるから女や外国人は

差別されていない、女や外国人が

社会で生きていく努力を

怠っている理論!!!

オタクくん、本当に醜いぞ。
社会が平等であるなら「女子高生を見て元気を出して欲しい」なぞ宣う性的消費目線の新聞広告は出ないし、外国人留学生に対して不当に低い賃金で労働させないし、入管で暴力は働かないし、同性婚は認められている。
オタクくんは自分たちが社会的地位の低いところで黙って生きてきてるから、自分以外の人間もしくは自分より立場が低いところにいる人間が社会に対して声をあげるのが許せないんだよね。
醜いよその生き方。
君らも辛かったならその経験をもって相手の立場に立って寄り添い支えなさいよ。
支える力が無いなら黙ってそこから見てなさい。

結局前世に対しての反省が一切ない。
主人公は正論を主張(校内で不良行為を注意)したことによってイジメられる。
イジメられる原因自体は全く批判される余地はなく素晴らしい行為だが、その後の行為や振る舞いに関しては全く褒められたものではない。
そういったところの反省を見せていくかと思いきや、セクハラオタク男性が異世界で気持ちよく生きていくだけの話。キツすぎ。

この手の「オタクが見返す・復活劇」なのにありがちな、オタクがイジメてきた側の社旗的地位に迎合していくサマはなんとも醜くて辛い。
何不自由ない明るい家庭に生まれ、父親の不倫は「人間の本能であるところの性欲」であると肯定し、「人間の本能であるところの性欲」をピュアに信じている主人公はセクハラして、それでも女にモテて、セックスしてようやくオタクの思う「社会的上位」に立った主人公は清々しく朝陽を浴びる。
女性向けコンテンツは「逃げ恥」をはじめとして現代社会に対する生きづらさに一石を投じたり、違う生き方を模索するんですがどうにも男性向けコンテンツは社会に迎合するコンテンツが多い気がする。
「逃げ恥」級とまで言わないが男性向けコンテンツで社会の生きづらさにモノ申す作品って無いんだろうか。本当に見かけない。

話はとっちらかっているが続ける。
主人公は魔法が超絶お上手で頭もキレる(周りがアホ)ので物事は大体穏便に進むし、セクハラしてもモテるし順風満帆。
無職40歳の前世の反省を活かすことなんてほぼ無かったように思える。どんな敵でも大体あっさり倒せるしスゲー強そうな敵でも少し頑張れば倒せる。
これは令和に作られた「オタク君向けアンパンマン」です。
オタクくんをあやすときはこのアニメを見て一緒に見てセクハラ演出を楽しみましょう!

良かった点をあげるなら作画・声優に関したら文句は全くないところですか。
鶴岡聡さんとか滅茶苦茶久しぶりに見たと思ったらチョイ役だったし、売れっ子の村中知さんも本当にチョイ役。大塚芳忠さん、田中理恵さんはガチでチョイ役。杉田らメインも死ぬほど豪華。ちょっとしたモブですら手抜きがないほどに。
ストーリーがゴミだからキャストと作画にコストを割いたなら方針としては間違ってないと思う。
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