さうすぽー

新世界よりのさうすぽーのレビュー・感想・評価

新世界より(2012年製作のアニメ)
4.2
自己満足点 82点

かなりハードで重苦しい内容でかつ濃密だったので、全部観賞するのに2ヵ月以上かかりました(^_^;)
でも面白かったです!

貴志祐介原作のSF長編小説を、A-1picturesがアニメ化した本作。
これが当時SF大賞を受賞したのは大いに納得です。それほど深くて興味深いストーリーに、なおかつ怖い作品になっていました。

現代から1000年後の世界で、「呪力」と呼ばれる、サイコキネシスとも言える超能力を持った人間達のお話。少年少女達の過酷な運命を四半世紀にわたって描かれており、人間の残酷さをシリアスに描いてきた貴志裕介の得意なサイコスリラー要素に人類史や生物学の要素と共に描いた壮大なストーリーで、なかなか引き込まれました。


世界観としては、前半の方は超能力でありながら「呪力」と名前を付け、呪いを封じるのは仏教の坊さんであったりと仏教要素が強い本作であります。また、妖怪とされてる「猫だまし」だったり、「悪鬼」や「業魔」と呼ばれる"怪物"という単語が出てきます。また、バケネズミという人の言葉が話せる、まるで"擬人化された動物"も出てきます。なので、SF作品なのに一見怪奇ファンタジーのような世界観です。

ただ、この作品はちゃんとSF作品であり、観ていくにつれて上記の要素にしっかり理由があり、何故バケネズミというネズミ人間が存在するのか、何故1000年後の世界でありながら携帯電話を持たない昭和のような世界観なのか。それらが明かされる時は正直恐怖を覚えます。

いわゆるユートピアに見せかけたディストピア世界ではあるのですが、何故この社会なのか、という理由は正直理解出来るものであり、子供に残酷なことをしている大人達にも正直共感を覚えてしまいます。それくらい深い設定であり興味深いです。


ただ正直言うと、この壮大で緻密な世界観の本作を25話で収めるのは正直窮屈な気がします。
というのも、この作品はストーリー展開がナレーションで頼る事が多く、登場人物の心情が省かれる事も少なからずありました。
OPを入れずに本編のストーリーが展開されるくらい1話ごとが長めに描かれてましたが、それでも展開が解りにくい部分がありました。
小学生時代、中学生時代、青年期時代の3部構成だったので、3クールで描いたらもっと理解しやすかったと思います。

また、この作品はとある理由で"同性愛"要素が出てきます。その描写が真面目な本作なのにBLや百合系のファンに媚びてる描き方をしていて、個人的には不自然に見えました。
何で道がある場所の広い野原で擬似S○Xに近い行為をやるわけ?

作画についても正直良くなかったです。
A-1picturesは作画が良いアニメーション作品が多いので、やはり今作も頑張ってほしかったです。


とは言え、
「もし人間が超能力をもったら?」という問いを1000年単位で考えだした貴志裕介の凄さと考えさせられるストーリー、驚愕的な伏線回収と、内容自体は非常に引き込まれました。
面白かったので、今度小説を読んでみようと思います。