鈴木パンナコッタ

美少女戦士セーラームーンSuperSの鈴木パンナコッタのレビュー・感想・評価

3.6
個別に見れば良い回もあったけど、全体としては悪いマンネリ感が強かったな。
毎回いつものパターンに終止して、いろいろと説明も掘り下げも足りてない感じ。キーワードの美しい夢とは何か、最後まで曖昧だった。
美しい夢=大人になること なので、成長(老化)を拒むネヘレニア VS 大人になろうとするちびうさ の図式に。構図としては理解できるけど、そういった描写はほぼ無かったわけで。後半のアマゾネス・カルテット登場からようやく子供の成長が触れられるようになった程度。
また、美しい夢=他者との関係から生じるもの とすれば、最終話でムーンたちが天空世界から地上へ帰還するときに都心へ降りたのも理解できる。普通この手のシーンは森の中に降りるけど、人との繋がりを求めて社会に戻ってきた、と。他者との関係を捨て、一人で美しさを保ち続けるネヘレニアとの対比。
最終決戦で「美しい夢は無くならない」→「人々の美しい夢に救われる」→「みんなが待つ世界へ帰る」とガタノゾーア戦になったのは、まあ分かるんだけど唐突だった気がする。
設定もテーマも最後のほうにぺらぺら台詞で説明して駆け足だったので、要素がうまく噛み合ってない感じ。

ペガサスが素性を明かさないのも、最初は「いずれ時が来たら」とはぐらかしていたのに、決戦前に「掟だから言えなかった」と言い訳。しかも急に掟を破ってすべて話した理由は不明。思わせぶりだっただけ。

キャラの活躍も気になる点が。ちびうさが実質的な主人公になったため、前半はセーラーチームがほとんど出ず、後半も最後まで対立する同期が弱かったような。前世からの因縁がガッチリあるのだから、もっと早い段階から小出しにして縦軸を盛り上げてほしかったな。

うさぎが縦軸にほとんど関わらないのに、必殺技の流れが「ちびムーンがペガサスを召喚」→「ムーンが必殺技」という流れなのも謎。ムーンとペガサスの間には因縁ないよね?後半にちびムーンも技に加わるのかと思っていたら、最後まで構成は変わらず。なんかこう、イマイチ繋がっていないような。

敵幹部の仲がよく、和気あいあいとしていたのは良い雰囲気だったけど、一方で、ゲストが襲われる→怪人を倒すというパターンに終止して盛り上がりに欠けた気が。
内紛があれば敵組織内の対立関係からキャラが立つので、アマゾントリオもアマゾネスカルテットも、最後まで十把一絡げのままだった。

いやホント、空気感は良かっただけに、個別のキャラが薄いのが残念。アマゾネスとセーラーチームのプライベートの絡みをもっと見たかったな。終盤にいきなりペガサスを横取りしようとした理由がよく分からないし、もうちょい掘り下げが欲しかった。
というのも、SuperSでのムーンたちは戦う動機が特に無い。これまでは友達を守るためとか、個人的に戦う理由があった。「もう4年目だし、今さら最初みたいに戦うのを嫌がるのもヘンでしょ?」って具合に、サラッと世界を守る。セーラームーンが昭和のヒーローになっちゃったよ。
3年も戦ってきたから、敵が現れたら戦うのが当然でしょ?というところからスタート。
足元がふわっとしたまま始まり、具体的な描写の薄い”美しい夢”を守るために戦い、設定は台詞で説明。マンネリの悪い部分が濃く出た感じ。
また、作画もなんだか力が抜けていた気がする。色気のある絵が少なく、なんかダラけ感。無印~Sで強く感じられた気合が薄かったような。ギャグやキャラの魅力はもちろん健在だけど、それだけでは満足度は決して高くない。
総じて、つまらなくはないけど傑作というほどでもない、微妙な印象。