ウシュアイア

ジパングのウシュアイアのレビュー・感想・評価

ジパング(2004年製作のアニメ)
4.5
ゼロ年代、海上自衛隊の最新鋭のイージス艦「みらい」は日米合同演習に向かう太平洋上で嵐に巻き込まれミッドウェー海戦直前にタイムスリップし、「みらい」一隻で当時の日米双方の大艦隊を凌ぐ力をもちながら、自衛隊の専守防衛の理念に基づき、戦いを回避してやり過ごすものの、撃墜され水没しつつある戦闘機から一人の将校を救命したことから、タイムスリップした自衛官たちが戦中の日本の歴史に大きく関与していくことになってしまうSF歴史サスペンス。


現代の最新の科学技術などの知見を備えた人物が歴史の転換期にタイムスリップして歴史上の事件に巻き込まれてしまうという作品ということで、本作に一番近いのは脳外科医が幕末にタイムスリップしてしまう「仁ーJIN」である。悲劇的な戦争という点においてはシリアス度は高いのだが、最新鋭の装備を兼ね備えた巡洋艦事ごろ過去の世界に行ってしまうという設定はよくよく考えればチートスキルを身に付けて異世界転移してしまう話と同じである。

とはいえ、登場人物は自衛隊の専守防衛の理念による縛りで無双状態の俺TUEEEEにはならず、現代の自衛隊が有事となった場合のシミュレーションややむを得ず攻撃行動や歴史へ干渉をする際の自衛官たちの苦悩と葛藤に焦点が当てられている。

最新鋭の装備で専守防衛と両立させながら目の前の人命をできるだけ救っていく序盤はある種のカタルシスはあるものの、やはり本気で攻撃を仕掛けてくる米軍や「みらい」の戦力で戦況を好転させようとする日本軍の思惑なども入ってくる展開になってくると、本当の戦争になったときに自衛隊の行動原理で戦えるのかといったことを考えさせられる。

また、フィクションとはいえ、現代の自衛官たちと時代を超えて過去の時代の軍人などと心を通わすことから、日本人や人間としての普遍的な思いや考えも描かれており、なかなか感動的であった。

一方、過去の時代の人物が未来の出来事を知るアドバンテージで「新世界の神となる」展開からの歴史サスペンス要素もあり、原作ではそちらが本筋となって話が続いたようだが、本作では本格化する前に終わってしまったのは残念。

2000年代前半の作品ではあるが、古橋一浩監督の演出により海戦のアクションや人物の表情の機微の表現により、高い完成度の映像になっている。

GYAO!の一挙配信でBroadband Editionを鑑賞。
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