うえこ

獣の奏者エリンのうえこのレビュー・感想・評価

獣の奏者エリン(2009年製作のアニメ)
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“野にいる闘蛇はごく普通になすことで、<イケ>にいる闘蛇にはできなくなることがある”

これは主人公エリンの母ソヨンが「牙」と呼ばれる重要な闘蛇を死なせた罪を問われた日の夜、エリンに放った言葉である。
闘蛇の世話に憧れを持つ当時10歳のエリンとは対照的に、何十年も闘蛇と向き合ってきたソヨンは笛で彼らを操り、管理することを好いていなかった。
野にいる時は生も死も己次第の闘蛇が人に囲まれた途端に“弱り“、それが見ていられなかったとソヨンは言う。

序盤では「できなくなること」が明確に描かれていないが、このセリフからは“管理される人生“に対する警鐘と「自然の環境は過酷ではあるが、そこでしか培うことができない能力がある」というメッセージが感じられた。

現代の日本において、目的を持たず所属組織に管理されながら日々生活している人は多いだろう。これを促す要素として「アンコンシャス・バイアス」というものある。
直訳すると「無意識の偏見」だが、無意識に自分にとって「心地の良い」生活を求め、満足するよう動いてしまうことを指す。日本が変化を嫌う社会なのはこの「アンコンシャス・バイアス」がより強いからともいわれている。
人は誰かに管理されると「居心地の良さ」と引き換えに主体性が弱まり、やがて活気を失う。体は健康でも文字通り“弱る“のである。

野にいる闘蛇のように生も死も己次第の環境で挑戦してこそ初めて人は成長をするのではないか。これからも過酷な環境で目標を叶えるためにもがき続けて欲しい。

序盤から壮大な展開を迎える本作品通してそんなメッセージを感じた。
うえこ

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うえこさんの鑑賞したアニメ