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アグレッシブ烈子 シーズン5の秀ポンのレビュー・感想・評価

アグレッシブ烈子 シーズン5(2023年製作のアニメ)
5.0
見事という他ない。

人生ベスト級に好きなアニメシリーズ。
そんでもって、最後の最後に最高傑作が来ちゃったんじゃないか?正直最終話は嗚咽しながら見ていた。

毎度のことながらめっちゃ面白かった。そして、これまでのどのシーズンよりも視聴に伴う苦痛がでかかった。特に前半。
社会人のリアルを描いていた本シリーズは、ここに来て、そこからあぶれた者達のリアルまで掬い上げるようになり、結果として視聴者には逃げ場がなくなった。
最終シーズンなら行くところまで行ってやろうと、マスコットキャラの限界ギリギリまで行っていた。ギリギリのところを踏み越えずにマスコットキャラに戻って終わっていたけど、やれるだけやってくれたと思う。

「気持ちなんて、他人に押し付ける以外使い道ないんだから」
泣いた。
孤独な怒りの発散方法だった烈子のデスボイスは、いつのまにか他者とのコミュニケーションに変化していた。コミュニケーションというにはあまりに荒っぽい。まさに気持ちの押し付け。
そしてその不格好で迷惑な行為は、もしかしたら誰かに声を届ける唯一の方法かもしれない。

「10数えたら、私は、何にでもなれる」

ep2
シカバネちゃんめっちゃ可愛いじゃん……。厭世的、ってわけでもないのか?現実的で醒めてるけど、腐ってるわけじゃない。呟くみたいな喋り方イイね。
住所不定無職になったハイ田、イイね。ネカフェ堕ちの描写マジでキツすぎる。
ネカフェ内の人間関係良い。ここに馴染んだ演出としてのコーヒーサーバーチョップ良い。

ep3
シカバネ良い子だな。
抜け出せぬ無限ネカフェ地獄の幻影。このシーズン、画面を貫通してこっちを刺してくる描写多すぎ。
同棲1ヶ月後のイライラやら、リアルな嫌さがある。
これまでも会社の描写とかずっとリアルだったんだろうけど、今回はそのリアルさが生活空間にまで侵食してきていて逃げ場がない。

ep4
親の視線怖。親への挨拶怖〜。
前職を何故やめたのか、ハイ田にはこの質問キツすぎだろ。視聴に苦痛が伴う〜。
スタックしたPCの再起動とハイ田の再起を重ねるのうめ〜。トン部長いい事言うよな。
金銭感覚、親からの質問が痛て〜。
「すみません、無職です」
耐えられずに一旦ブラウザバック。
お父さんが普通に優しいの意外。と思ったら。
このシーズン面白。

ep5
握手券100枚の圧。それでも絶対殴り返すマナカ可愛い。
シーズン4からトン部長すっかり可愛くなった。
スーパーのスタッフルームといい、未知の世界に順応していく過程にワクワクする。
柿の妙な不人気さ、すげー分かる。
只野くんだ!!!わーい!
ネカフェ、住人の入れ替わりの激しさとか、絶妙に希薄な関係とか、特有のものがあって良い。フラフラ漂ってる奴らが偶然その時一緒の場所に居る感じ。いや、これ本当にネカフェ特有か?

ep6
ハイ田宅こえ〜。しかしこれはもはやファンタジーで、リアルだった烈子宅よりは怖くないというのも事実。スカイツリーの展望台よりも5階建てのビルの屋上の方が怖い。
地獄の食卓面白い。社会的ステータスの高い人間が驚くほど素朴に自己責任論を信じてるの、個人的にかなり見覚えがある。
実存主義vs構造主義。もしくは日本の成長期と衰退期の世代間のレスバ。側から見てる分にはアツいバトルだけど、この場に居合わせてる烈子からしたら溜まったもんじゃない。
気弱で良い人で、幸せな家庭像と現状とのギャップの認識が若干バグってるお母さん、この人見てるとかなり辛い。
タクシーの件、音楽の演出良いね。豹変した弟にブルってきた。

ep7
前話の最悪な終わり方を、盛大に嘆かせることで笑いに変えてくれるの優しい。
柿くれるアライグマおばさん可愛い。
アイドルとしての政治家。
アイドルファンを側から見てるだけのエアプだけど、「頑張ってる様を応援したくなる」って彼らの言葉は、アイドルは努力の代行者だってことを(少なくともその一面を持っているということを)示している。一方烈子は努力ではなく怒りの代行者として存在している。これってかなり政治家的、それも急進派の。
この先どうなっちゃうんだ?楽しみすぎる。

ep8
久々のゴリ部長たちとのカラオケだ!
マイク!そっかー!上手いな。烈子のデスメタル用のマイクは演説用のマイクにもなりうると。
豹堂とマナカ悪どいな〜。それぞれの思惑を持って行動してるの素晴らしい。7話終盤から展開が激動するの、シーズン2を彷彿とさせる。
「お前の声なら伝わる」クソ熱いな。

ep9
ここまでのすべてが繋がってくるの気持ちいい。
只野くんがすっかり便利キャラに。
「ネカフェも外も変わんなくない?」そうかも。

ep10
良かった。感動。
シカバネ⇔烈子ってことか。
この物語は、怒りを世界への期待と現実との間の摩擦だと定義しなおした。このとき、シカバネは世界への期待を捨てているが故に怒りを持たなかった。最後に烈子は、シカバネに世界への期待を持たせることに成功する。

「目は笑ってないなあ?目は笑ってないなあ?」ここの烈子の声マジで最高。
「老害駆逐法案!!」
かなり笑った。

これまで散々表明してきた日常への怒りを、その大元にある政治につなげるのはめちゃめちゃ良いんだけど、そこにはマスコットキャラが故の限界がある。
マスコットキャラって無時間的な存在であって、変化するのはご法度。
日常にキレるというキャラを永続させるためには、日常を変えてしまってはいけない。つまり烈子は絶対に政治的なアクションを成功させてはいけない。このファイナルシーズンは、マスコットキャラの限界のきわきわまで行って帰ってきた感じがする。
そして現状は変えれないけど、代わりに何かを成し遂げるために、シカバネという現状に対して不感症になっているキャラクターの救済っていう小さな話に移行した。
そして社会を変えるという任は、烈子に感化されたハイ田弟に託された。
(ここで、ハイ田弟を改心させたりしないのがめちゃめちゃ良い。安易にデレたりさせず、ただくしゃみっていうハイ田と同じ身体性を見せることで観客に愛着を湧かせる)

これ以上のことをしてしまうとマジでマスコットキャラとして終わってしまうので、これがギリギリのラインだったと思う。アニメが終わってからも、彼女にはサンリオキャラとしての人生が続くのだから。
そして、これ以上のことができない以上、これを最終シーズンとするのは正解。
(それはそれとして!!!!それでもまだまだ烈子達のことを見ていたい!!!)
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