dieBananaSuki

トロピカル~ジュ!プリキュアのdieBananaSukiのネタバレレビュー・内容・結末

4.9

このレビューはネタバレを含みます

傑作だよ、ほんと。
最終回で何回も泣いてしまった。だって、ローラとお別れしたくないと泣き出すまなつの気持ちが真に迫るものだから。トロピカル部での楽しい日々を過ごした友達であり、プリキュアとしてともに激闘を潜り抜けた仲間として彼女自身の日常に欠かせない存在だったのだから、別れたくないよと思うのは当然だもの。でも、それだけじゃなくて、まなつ自身のやりたいことを応援するという姿勢との葛藤の果てに別れたくないと感情があふれてしまったことが何よりもぐっとくる。これは、やっぱり、わたしたちがトロピカル部の活動を見続けてきたことで一層、まなつの感情を理解できるようになっている作劇のうまさに由来すると思う。それは、ローラが人間になりたいと思うようになった展開(みんなが楽しそうなことをしているのに自分だけそれを見ているという構図、その疎外感から仲間に入りたいと思うのは当然だから)でも使われたもので、こういううまさと、キャラクター同士の掛け合いの面白さが本作を傑作たらしめていると思う。みんなが何気ない日常を精一杯楽しもうとするから、こっちも楽しいし、うれしくなる。観ていて楽しさしか感じない。
いっぱい語りたいことがある。
まずは、あとまわしの魔女の話。44話もまた泣いてしまった。魔女が人間と友達になりたいけど、怖くて友達になる勇気が持てなかったこと。それがプリキュアたちの力によって友達になることができた展開。泣いてしまうよ。だってこれもまた私たちのありふれた心の動きだから。怖くて、傷つくのを恐れて、だからやることを先延ばしにしてしまう。それでかなわなかったことが多くあって、だから後悔が増えていく。だけど、あとまわしの魔女は人間と友達になった、なれた。そこには私たちの無念を代わりに果たしているようなカタルシスがある。これはプリキュア5を観たときにも思ったことなのだけど、敵サイドはたぶん大人の気持ちが入った造形になっている。もう少し目線が大人向けで、おもな視聴層である女児の親(親だけではなく大人)にも訴求力を持っている。そして、あとまわしにし続けた結果自分が何をしたかったのか忘れてしまうというところは示唆に富んでいる。後に回せば回すほどその時の生の気持ちが時間とともに消えて行ってしまう。そして忘れてしまう。それと対比するようにまなつたちがいる。例えば、みのりがプリキュアになる回でのみのりとローラのやり取りは、たぶんあとまわしの魔女のエピソードと対をなすような形だと思う。怖くて動けないみのりは、勇気をもって一歩踏み出したことでかけがえのない友情を手に入れたのだから。
それから作劇のうまさについても語りたい。先述のように登場人物の感情を理解するための積み重ねが異様に丁寧だ。ローラが人間になるまでの感情の動きは、ただ観ているだけの私たちとまったく同じだし、お別れしたくないというまなつの気持ちもまた私たちとリンクしている。そういう導線の巧みさが本作を下支えしている。人物の感情だけでなく、全体をとおして、定期的なイベント(本筋にかかわる話)の組み込み方がうまい。ヤラネーダのレベルアップ(純粋なレベルアップが3回と、バトラーによる水や生物を使った作戦と単純さがまったくない)という危機がだいたい10話毎に訪れ、そのタイミングで技のレベルアップや追加戦士の投入などがおこなわれる。最後までダレることなく、通しで観ても全然楽しめる。また、キャラクターが濃いのも魅力で、とくに日常回でのやりとりが楽しいのが大きい。まなつとローラがボケて、みのりがその後ろでささやかにトンチキなことをして、あすかが突っ込んで、さんごがあわあわするだけで面白い。これは単純にキャラクターの強さあってのものだ。そこにトロピカル部というなんでもやるという設定が乗るので、毎度、違うシチュエーションで、キャラクター同士のやり取りが見れる贅沢さもある。また、ローラの存在が大きいと思う。彼女は人魚なので、人間の世界に疎い。実質視点は女児の皆さんと同じで、だから毎度置いてけぼりになることなく安心して観れるようになっている。とにかく親切なつくりになっている。個人的には、みのりが名探偵をする回が大好きだ。あのとんちんかんさは、5GOGOの名探偵こまち回のオマージュだけでなく、シュールさが追加されていて大変面白かった。あとは33話もすごかった(ここではあえて語らないが、観ればわかる)。ほかの回も、細かなネタが多く(人間になったローラの願いがバタ足ができるようにだったり、あすかの父親のの晴れ男設定、天文部回の被り物などなど)て、楽しい。さすがは犬の糞を踏んだというセリフで締めたプリキュアだ。
最後は、くるるんについて語ろう。存在しているだけのあのけもの、なんだあれは。可愛すぎる。なんかアクションしただけで可愛いし、面白い。くるるんすきだ~!
毎日1話ずつ観ていたので、初めのほうとは結構忘れているけど、とにかく面白い作品であることは間違いない。マジで観てよかった作品。
プリキュア全作観る試みを始めて、本作で3作目なのだけど、序盤も序盤で傑作(1番好きなのはプリキュア5で、2番目が本作)を引き当て続けているので後半しんどさ(プリキュア5や本作を超えるものが全然出てこないことによる不満)が増してくるかもしれない。
これはDVD購入が確定しました。口座から10万円が吹っ飛ぶ覚悟だけしておきます。