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STAR DRIVER 輝きのタクトのメンバーのレビュー・感想・評価

STAR DRIVER 輝きのタクト(2010年製作のアニメ)
4.0
始めは意味が分からなかった。意味が分からな過ぎて、第1話を総集編かダイジェストだと勘違いしたほどだ。しかしそれは筆者の頭が本作の演出意図に適合していなかっただけであり、見ていくうちに「その演出意図を概ね理解するに至った」。
作品内で繰り返し運用される映像のことをバンクと呼ぶのだそうだ。本作ではお約束の如くバンクが効果的な演出として必ずと言ってよいほど登場する。その瞬間が絶妙に気持ちが良い。そさひて、その都度主人公は毎度必ず同じ口上を述べる。常に作中のあらゆるシーン、あらゆる挙動が、毎度おなじみの演出のためだけに存在するかのような収束を見せる。その意味で毎回期待を裏切らない。しかしマンネリズムは生じない。なぜなら毎回そこに至る過程が異なっており、異なるテーマや事件を内包しているからだ。ありがちな形式の作風ではあるものの、筆者が様式美の快楽に浸るには十分なほどの高みにまで引き上げられていた。
鑑賞したのが数年前のためなのか、どういった内容の話だったかは殆ど覚えていない。話の内容は忘れたが、映像体験を通して得られた鮮烈な印象と光景および情報が筆者の記憶に刻まれている。巷では「爪痕を残す」という言葉を耳にする機会がある。本作は間違いなく筆者に対して、決して引き抜くことのできない巨大なくさびを深々と打ち込んでしまった。その事実はある意味で、本作の持つ力量を如実に物語っている。
ごく稀に「さらざんまい」や「少女 歌劇 レヴュースタァライト」などの、本作のような過剰な演出が施された様式美を有するアニメーション作品が出現することがある。筆者にとってそのことは楽しみ以外の何物でもない。
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