ジェイコブ

チェンソーマンのジェイコブのレビュー・感想・評価

チェンソーマン(2022年製作のアニメ)
4.0
悪魔が実在し、人々を苦しめている現代日本。親が残した借金が原因で、ヤクザにデビルハンターとして雇われているデンジは、相棒のチェーンソーの悪魔犬ポチタと共に、貧しいながらも楽しく毎日を過ごしていた。そんなある日、デンジはゾンビの悪魔にそそのかされた雇い主のヤクザに裏切られ、ポチタとともに無残にも殺されてしまう。死にゆく意識の中、流れ出たデンジの血を受けたポチタは、「デンジの夢が見たい」と語りかけ、デンジはポチタを身体に宿した「チェーンソーの悪魔」として甦る。悪魔をも恐れさせる狂気的な強さを見せたデンジは公安のデビルハンターマキマに見初められ、公安にリクルートされるのだが……。
藤本タツキの人気漫画をアニメ化した本作。原作がカルト的な人気を誇るが故に、賛否両論が巻き起こった事でも話題となった(原作を知らない私はかなり面白いと思って最後まで観ていた)雰囲気的にSPECに近いものがあると感じたので、好きな人にはハマるかも。
本作が賛否両論を巻き起こしているのは、監督の発言や、本作が初監督作品で、これまでに実績がないにも関わらず、全く新しいアニメを作ろうとした事だろう。声優のボソボソ演技に、実写を意識したようなカメラワーク、近年の流りに逆行するかのような長い間などなど。そこから分かるのは、監督が目指したのはいわゆるアニメらしくないアニメだったことだ。原作を読んでいないので、上記演出がどれだけミスマッチしているかは測りようがないが、アキや姫野のタバコのやり取りはドライブ・マイ・カーを彷彿とさせるし、金的が原因でいがみ合ってたデンジとアキが、敵の金的を蹴り合う事で交流を深める下品とエモさをごちゃまぜにしたラストは、タランティーノ映画を思わせるものがある。まあ、パルプフィクションをオマージュしたオープニングから見るに、監督がタランティーノからの影響を強く受けているのは確かだが。こうして挙げてみると、確かに日本のアニメで、実写映画からのオマージュが露骨なまでに入れられているのは早々見られるものではない。新しい試みには間違いないのだが、原作ファンからすれば自分が崇める作品を実験台のように扱われたのが許せなかったのかもしれない。アニメにしろドラマにしろ、これまでにないことをやろうとするのは批判覚悟の上でなければなし得ない。そのため、セオリー通りに作るのが無難なのは明らかだ。だが、アニメ大国と言われた日本はそれでいいのだろうか。この話で思い出したのが、勝新太郎監督のドラマ「警視K」だ。警視Kも、その話題性から開始当初は多くの期待が寄せられたが、第一話放送終了後にはリアルを追求しすぎた内容であるが故に、批判が殺到した。しかし数十年経った今、国内外のドラマで一般的となったヌーベルバーグをいち早く導入していたとして再評価する動きも出ている。あと、誰かが指摘していたアキのモーニングルーティーンについて。復讐の為に公安のデビルハンターとなったアキが呑気に朝のコーヒーを楽しんでいるのが違和感を感じるとのことだが、人間を多面的に描く意味ではありなのではと思った(いつもいつも復讐ばかり考えていたら逆に違和感を覚える)
逆に惜しいと思った点。デンジとパワーが強くなる修行のシーンが端折られている点。一流のデビルハンターに鍛えられるというのだから、もう少しボコボコにされる二人を見せてほしかったし、そこから這い上がってくる二人も見たかった。あと、パワーにももっと暴れてほしかった。後半怒涛の如く話が進んだが、もう少し敵との戦いの場面や、新たに仲間に加わったデビルハンター達をもっと描いてほしかった。まあ、この辺りはシーズン2で見られると思うが。
余談だが、本作を見て、なぜ藤本タツキがサイコゴアマンにどハマリしたかが分かった笑。サイコゴアマンで言うと、デンジ→サイコゴアマン、マキマ(性格パワー)→ミミ、ミミの兄→アキという構図が不思議と当てはまる。なので、チェンソーマン好きがサイコゴアマンにハマるのもある意味自然なのかもしれない笑。