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RAINBOW-二舎六房の七人-のウシュアイアのレビュー・感想・評価

RAINBOW-二舎六房の七人-(2010年製作のアニメ)
3.9
戦争によってもたらされた不条理がきっかけで罪を犯した少年たちの熱い友情の物語。

(あらすじ)
終戦間もない頃、湘南特別少年院二舎六房に送られた6人の少年は、同房となった年上の「アンチャン」と出会い、看守の激しい虐待を受けながらも、アンチャンの生きざまから生きる強さを学び、出所後看守に復讐を果たし、もがきながらそれぞれの人生を生きようとする。

自分達を虐待した看守たちへの復讐が前半、その後それぞれが生きる道を見つける話が後半。原作はその先も続いているようだが、諦めるものは諦め、ある程度希望が持てるところで終わっているので、その後に待ち受けている困難を描いても、繰り返しになってしまうので、下手に続編を作らない方がいいかもしれない。

虐待した看守への復讐劇はハリウッド映画『スリーパーズ』、待ち受ける不条理を友情で乗り越えていく展開は『BANANA FISH』を思い起こさせる。

戦争は社会に不条理をもたらし、女、子どもといった弱いものにより多くの不条理をもたらす。そんな時代を生きた少年たちの物語。少年たち以上に、彼らを取り巻く女性たちに襲い掛かる不条理もあまりに辛いものがある。そんな、女、子どもを食い物にする者もいれば、手を差し伸べるヤクザなど混沌とした戦後の空気が描かれている。

原作者の安部譲二氏は前科もあり暴力団員だった過去もある。昭和の頃って政界や芸能界にはヤクザの過去や前科をもった人は割といたようで、そういうものに寛容だった気がする。社会の不条理により犯した罪もあることをみんな知っていたからなんだろう。


原作の絵柄は劇画っぽく、その空気感を残しつつ、少し当時の流行に合わせたキャラデザインと作画になっている。監督は翌々年にリメイク版『HUNTER×HUNTER』を手掛けた神志那弘志氏で、印象的なシーンの終わりに手描きの静止画をもってきてナレーションを入れる独特な演出は共通しており、本作にとても合っていたように思える。

主人公たちの中心にいたマリオ役は小栗旬。『獣王星』の時よりも違和感がなくなっていた。ヒロインの貫地谷しほりも本業声優ではないなりの良さもあり、ゲストキャラクターもベテラン名優ぞろいで良かった。
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