こたつむり

∀ガンダムのこたつむりのレビュー・感想・評価

∀ガンダム(1999年製作のアニメ)
4.5
◆ 朴訥!文明の終わりに燃え上がる野望!
  歴史は何度過ちを繰り返せば良いのか!?

いわゆるトミノ世界名作劇場。
これまでの『ガンダム』とは一線を画く物語です。19世紀ヨーロッパ(一部アメリカ)のような世界観と、大地にシッカリと根付いて生きている人たち。その空気はまるで“癒し”。とても居心地が良いのです。

それは主人公の造形にも現れていて。
ロラン・セアックがとても温和で優しいんですが、嫌味が無いんですよね。勿論、それに相対する敵や、野心を燃やす人物も出てきますが…彼らの言い分も納得できるところがあり、人工物の香りがしないのです。

何よりも女性陣の活躍も心強く。
キエルもディアナも芯が通った女性として格好良いのです。周囲に振り回されてしまうソシエも最初は鼻につきましたが、成長していく姿が描かれますからね。確実に本作は彼女たちの物語と言えましょう。

だから、物語にも強引さがなく。
最初から最後まで練り上げて作られた感じがしました。

ただ、逆に言えばモビルスーツは微妙。
シド・ミードの造形は先鋭すぎるし、魅力的な量産型も出てきません(ザクはボルジャーノンと名前を変えて出てきますが…やはり、物語世界に埋没しています)。ロボットアニメなのにメカは従なのです。

でも、それが良いのでしょうね。
あくまでも本作の主眼は人間。
如何にして生きるのか、と力強く問う姿は『ガンダム』と同じでした。なるほど。『ガンダム』20周年記念作品というのはダテじゃなく。節目を祝う飾りに陥っていませんでした。

まあ、そんなわけで。
ガンダムの名を冠したガンダムではない物語。
冨野監督は全てのガンダムを包括する意味合いで臨んだらしいので、ガンダムを愛する人ならば鑑賞必須だと思います。

最後に余談ですが、巷で一般的に使われる「黒歴史」は本作が原点。それだけでもスゴイ話ですよね。
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