SANUKIAQUA

ペリーヌ物語のSANUKIAQUAのレビュー・感想・評価

ペリーヌ物語(1978年製作のアニメ)
4.8
世界名作劇場の中でも1、2を争うくらい
大好きな作品です。
最初に見たのは幼少期のことで
良かったという感触しか覚えになく
高校時代に改めて再放送で
夢中になって見直して
いい作品だなと感心しました。
当時はまだペリーヌと年齢が近く
彼女目線で物語を見ていましたが
年齢を重ねて、もっと広い目で
物語に出てくる様々な事柄を考え
大人たちの目線からも見ることができました。

原作はパリに入ってから始まるらしく
ボスニアからアルプスを越える前半の旅は
アニメオリジナルということですが
この前半があるからこそ
パリからマロクール編があるのだと思います。
とにかく長い長い物語ですが
見始めたら止まらなくなります。

ペリーヌの印象としては
非常に優しく賢く思いやりもあり
逞しく生きる力があるという
イメージがありますが
最初からそうだったわけではありません。
母との旅の間に出会う人々や出来事を通じて
少しずつ少しずつ大切なことを学んでいくのです。
特に旅の写真屋が写真機を盗むエピソードの回は
後のペリーヌに強い影響を与えたと思います。
旅の途中で出会う人々は
いい人もいればいじわるな人もいます。
その中で強くなければ生きていけないし
優しくなければ生きる資格がない
という小説のセリフの通りに
ペリーヌは少しずつ成長していきます。

しかしペリーヌのお父さん、お母さんの
無念たるやいかほどだったことでしょう。
お母さんの必死な覚悟には心が痛みました。
原作の日本語題名は家なき子ですが
家というより家族であり
なきというよりこれは
祖父から孫まで続く家族の物語。
ペリーヌによって氷解していく
祖父の心、息子の妻への偏見、
そこから会社や町の福祉まで
話が広がっていく展開が素晴らしい。

正直パリからマロクールの旅が
あれほど過酷なものになるとも
マロクールについてから
あれほど苦労するとは思いませんでした。
しかしペリーヌが逞しく知恵を働かせて
生きていく姿は魔法ではなく
彼女が母から学んだことであり
旅を通じて彼女が学んだことを
活かしている証であり
彼女の旅と姿勢を見続けた者から見れば
不思議ではありません。
語学を含めた教育と
道徳心を養う教育、そして社会性、
色々と学び、考えることのできる
素晴らしい作品です。

苦難の末にペリーヌが幸せを掴んだ時の
感動はなかなか得難いものです。
彼女の素性が明かされる瞬間の
無音の演出が素晴らしいです。

人に愛されるには
まず自分が愛さないと。
いつまでも心に残る金言です。
SANUKIAQUA

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