めしいらず

アルプスの少女ハイジのめしいらずのレビュー・感想・評価

アルプスの少女ハイジ(1974年製作のアニメ)
4.5
世代を超えて愛され続ける日本アニメの金字塔の一つ。それまでスポ根ものやヒーローもの一辺倒であくまで子供向けと見做されてきたアニメを、子供のみならず大人も十分に愉しめる作品にまで高められたのは、やはり演出高畑勲がいたおかげだろう。何か特別な出来事を描かずとも日常生活や人と人との関係性だけで十分にドラマたり得ることをアニメ作品で示した功績は大きい。何てことないお話がこんなにも面白いのは正確な描写力があったればこそ。例えば子どもの時分に干し草のベッドやヤギのミルク、炙ってとろけるチーズに心までとろかされなかった人は少なかろう。そして人にはそもそも善も悪もないこと、それは飽くまで見方次第だということが判るよう登場人物を的確に描いた点も重要だろう。村人と没交渉だったおんじの歩み寄り。狭量ではあるけれど極めて誠実なロッテンマイヤーの勤務姿勢。無責任なようでもそれなりに姪を気にかけていた叔母デーテ。気配りが結局は娘の可能性を狭めていた父ゼーゼマン。時に頼り甲斐あり時に意志薄弱なペーター。ピュアなハイジですらそれ故に時に相手を傷つける。クララがいかに自分が人に生かされてきたのかを山での暮らしで初めて気づく場面が感動的。人は人と繋がっていてこそ生きていけるのだし、そこに己の生きがいを見出すことができる。
一体何年振りに観たのだろうか。懐かしくてたった4日間で見終えてしまった。国民的アニメと呼ばれるに相応しい不朽の名作。耳心地良いことだけでなく、無学な者が特に貧しい暮らしぶりである現実の残酷さもさりげなく描かれている辺りが流石だと思った。
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