浅野公喜

KEY THE METAL IDOLの浅野公喜のレビュー・感想・評価

KEY THE METAL IDOL(1994年製作のアニメ)
4.1
3万人の友達を集めれば人間になれると信じるロボットの少女がアイドルを目指すSFサスペンス。子供の頃カタログで見た少女と周りを沢山の人間が取り囲むDVDのジャケが強く印象に残っており、数年前にタイトルを知ってやっと鑑賞しました。マサヒコ・ニシムラのお気に入りの作品だそうで、OVAですがBSでも放送された事も有ったとか。

主人公キィと親友さくらが物語の中心となるわけですが、ロボット故に微妙にズレた発言をするキィとそれをツッコむさくらの関係が時に面白く、二人に加え90年代中盤の作品らしく胡散臭い宗教団体の教祖やテツヤ・コムロをかなりエキセントリックにしたような音楽プロデューサー、キィの憧れであるトップアイドル(鬱瀬美浦)等も登場、ストーリーのスケールはどんどん大きくなっていきます。また、SNSの普及した現在では「友達」=フォロワーとも捉える事が出来そうで、時代的な距離感はさほど感じません。そして、基本キィはロボットらしい表情や動きですが、心を動かされるような状況に陥るとふと人間のような表情になるのが印象的。

全話観ると、アイドルとは何かという事、そして人間の力について考えたくなりました。アイドルは基本期間限定的とも言えるもので、それがロボットであれば年を取ることも無く、使い捨ても可能でステージで失敗する事もスキャンダルにも無縁、辛い事が有っても取り乱す事だって無いはずです(劇中次々「用意される」アイドルはどんどん消費されるアイドルを風刺しているのかも)。

キィは最終話で様々な悲しみを負って取り乱すのですが、その後の展開は人間が持つそういった感情、そしてテーマの一つである人間の人間に対する「想い」が無ければ実現出来なかった事にも感じましたし、やはり人間の心を動かすのは人間で、結局どんな過ちを犯したとしても人間は人間の、それもアイドルの力を信じずにはいられない気持ちが有るのかな~なんて考えてしまいました。

なんだかんだ楽しみましたが、人に勧められるかと言われれば微妙。しかし色々な考えが浮かぶ内容の濃い作品でした。劇中も色々な曲が用意され充実してますよ。
浅野公喜

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