きまぐれ熊

SSSS.DYNAZENONのきまぐれ熊のレビュー・感想・評価

SSSS.DYNAZENON(2021年製作のアニメ)
4.0
SSSS.グリッドマンの続編。
実写特撮「電光超人グリッドマン」のアニメ作品第2弾。

前作は世界観の謎を実写作品との関係性を絡めつつ解き明かしていく様なドラマチックな構成だったけど、今回は青春群像劇だった。なんならロボットがメインテーマですらないので、とにかく熱いバトルが見たい人にとっては日常パートのテンポに辟易するかも。でもどう考えても人間ドラマがメインなのだ。ロボ戦はあくまでもモチーフでしかない。

もっと言うと最終回のトリガーらしいテンションが振り切れたクライマックスバトルが超最高で、そのノリを記号的・形骸的なバトルシーンにしない為の説得力を1クールかけて積み上げるという構成になってる。もちろん毎話バトルはちゃんとするんだけど本当にやりたかったのはキャラクターの成長が伴ったラストバトルの盛り上がりなんだと思う。

作画的なクオリティはもちろん抜群なんだけど、本作はとにかくメインの5人の関係性と距離感を丁寧に丁寧に描いてるのが素晴らしい。

クラスのはみ出しものや引きこもりやニートやホームレスという明確な弱者集団である主人公チームはひねくれ者ばっかりで、全員闇を抱えていていつ誰が闇堕ちしてもおかしくない。
そんな5人がロボットで戦ううちに徐々に距離を詰めながら前に進んでいく姿のカタルシスがとにかく丁寧に泥臭く描かれてる。

特にそれなりに空気が読めて自己主張しない主人公蓬や、自分の感情が咀嚼できていないヒロイン夢芽がそれぞれの課題を克服しながら距離を縮めていく恋愛がちゃんと描かれてるのが特に良い。

このアニメ、特に悪い人でもないんだけど絶対にいい人ではない普通の人の解像度がめちゃめちゃ高くて繊細な人はしんどいかもって位会話劇のクオリティが良く、そんな人たちの中でそれでも倒さなきゃいけない怪獣とはなんなのか?という特撮的なテーマにおいても真摯に回答を用意しているのでそういうロジックをメインで見ればマジで最高の脚本であると言える。

反面、そういう議論に必要のない枝葉のSF的設定類は全てぶん投げられるので丁寧な解説が欲しい人は見ない方がいいかもしれない。この作品において説明されないことは“どっちでもいいこと”なんだという思想を感じる。なんかインセプションのラストみてぇ。


あと演出面では、セリフの係り受けが素晴らしかった脚本の9話と、絵コンテの情報量の凄まじさが光る10話を推したい。
前作キャラの客演のバランス感覚も天才的にちょうどいい塩梅。
演出面に関しては好き嫌い分かれそうではあるけど個人的には文句の付け所がない内容。
ただし、映像で語る内容の比率が多くて、映画的な読み解き方に慣れてないと単純のテンポの悪い会話劇が多くを占めるような印象を受けるかもしれない。感じるんだ。


推しキャラはちせです。
ぶっちゃけちせだけは引きこもりの原因がエピソードで描かれてないのが不満で、他の4人に比べるとややテンプレキャラっぽかったのが残念。でも暦を取られそうになってめちゃくちゃキレてる眼とかは凄い良かった。7話ラストで暦とヘラヘラ笑ってる時とか最高。これが尊いって感情か。

あと主役の恋愛劇が良かった〜とか上で書いてて言うのもあれだけど、蓬は人間だったらめちゃくちゃ嫌いなタイプ。おるよね〜そこそこ恵まれててかつリスク取らないくせに死ぬほどプライド高い奴。まあそれだけに9話の脚本はめちゃくちゃ刺さったんだけどね。ブーメランも刺さって痛いのでここら辺で筆を置きます。
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