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学園戦記ムリョウのTheCharacterのレビュー・感想・評価

学園戦記ムリョウ(2001年製作のアニメ)
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こんなに平和な世界を知らない。秘密や脅威もあるとはいえ。

こういう雰囲気とテンションでいこうと決めたことが素晴らしい。素晴らしすぎる。この平熱で大らかなムードに包まれると、何もいらないし、こわいくらい浄化されてしまう。この辺りはムリョウと、何より始の性格に依る面が大きいのだろう。初めて観たのは登場人物たちとそう変わらない歳の頃だと思うけど、この空気に救われていたような、そんな気も。

"学園戦記"とかいってるけど、戦い殆ど無いよね。話の軸としてはあるけど、活き活きして魅力的なキャラクターが多いんで、兎に角日常が良い。対比でシリアスな展開と引き立て合ってるのも事実だけど、正直いらんのよシリアスとか。まあそんなに無いけど、いざ出てきたら結構重いね。しかし、バトルになるとなんかエヴァっぽい要素がちらほら。百恵さんも幻海みたいだし、必要と思えない既視感が出てくると気になってしまった。

尋常じゃなく丁寧に作られている印象があるが、強く意識させない自然さがある。『実は凄いよね』という場面が多い。映像愛の強さ。ユーモア演出とか、凄すぎて寧ろ笑えない時がある(だめじゃん)。いや、笑えるシーンいっぱいあるよ。とても温かい笑い。ハッとするような台詞も結構あるし。

ウィキには始が"普通の中学生"って載ってるけど嘘つくな。所謂、視聴者の代表といった役割を担いそうなポジションなのに、全くそうなっていない。あんなに他者を気遣えて大らかでマイペースな人はそういない。あの両親の子供だもんな。そもそも年齢の割に大人な奴多すぎなんだけど、そこは良い意味でファンタジーだし、幼少期にああいうヴィジョン見せられたらそうなっちゃうのかも。一歩間違えばめちゃめちゃ虚無になりそうだけど、メンタルヘルスには気をつけてほしいところ。

未来のテクノロジーとして、現在既に実現できている物が出てくると楽しい。でも2070年にしては大して変化が無い。服はほんのりY2K。しかもフューチャリズム入ったカジュアル(特に那由多)でちょっといいっすね。

ラスト2話は少し駆け足感が出てしまった。ムリョウは結局始のことを「村田君」としか呼ばなくてモヤモヤ。もっと時間かけなきゃいかんの?素直ではあるけど、他者との距離感には課題が残るというか。立場的にしょうがないのかなあ。

那由多を見ていると特に、自分に素直でいること、また、そういられる、いざるを得ない相手と出会うことの大切さを感じる。この世界はそう生きるに相応しいような場所でなく、心を開いて他者と向き合える人間も僅か。人の心を開ける人間は、その僅かな人達だけ。そんな人に出会えるのは奇跡。天網では自分に素直に生きられるムードがあるけど、ユートピアすぎて彼岸の静けさが漂っている気さえする。

割と前の作品にしては古い価値観やらハラスメントっぽい表現がほんとに無くて、安心して観られた。もっと観たいー寂しすぎるー。
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