ウシュアイア

Phantom 〜Requiem for the Phantom〜のウシュアイアのレビュー・感想・評価

Phantom 〜Requiem for the Phantom〜(2009年製作のアニメ)
4.4
虚淵玄(ニトロプラス)のゲームを原作とする、ハードボイルド系ガンアクション・ラブストーリー。

記憶を失い気が付くと”ツヴァイ”(ドイツ語で”2”の意味)という名前を与えられた日本人の青年(すぐに吾妻玲二という本名が判明する)、”アイン”(同"1"の意味)という名前を与えられた少女から暗殺術の手ほどきを受け、アインとともに世界中の闇組織を次々と傘下に収めていく秘密結社”インフェルノ”のヒットマンとして、苦しみながらも生きるために暗殺稼業に手を染め、どんどん闇社会に引きづりこまれていく。

全編通じて現実世界をベースに超能力(魔法)や未来テクノロジーといったSFやファンタジーの要素なく、最終章の場面設定を除くと、ほぼほぼオーセンティックなハードボイルドアクションサスペンス&ラブロマンスで話が進行する。アイスドール系のメインヒロイン、名前とアイデンティティのギミックもベタと言えばベタなのだが。

テーマも闇社会に生きる人間の人間性の回復、救済の話となっているので、今まで観た作品の中でストーリー的には『BANANA FISH』が一番近い感じがする。

原作のゲームには大人向け恋愛趣味レーション(エロゲー)の要素もあったようだが、後に『ヒロアカ』などを手がけた黒田洋介氏の脚本でうまく一般向けに中和されている。後に黒田氏の携わった作品に『ヨルムンガンド』や最近では『BIRDIE WING -Golf Girls' Story-』などもあったことから、なんとなく両作品につながるものを感じた。

また制作時期がゼロ年代ということで、2クール26回で(うち2回は次章へのつなぐ最後の5分を除いた総集編回とはいえ)、感情の機微の変化を丁寧に描いたストーリー展開になっている。とはいえ、作品が乱立し原則1クールで詰め込んでまとめる昨今の作品と比べると緩慢に感じるかもしれない。

キャラ作画の統一性に揺らぎを感じるが、作画・美術は全般的に良好。声優の演技も安定感がある。セーラーマーキュリーから悪役が増え始めたクロウディア役の久川綾さんの艶めかしい演技が特に印象的。

見ている人が少ないため評価の振れ幅が大きく低めの評価となっているが、今の作品にはあまり見られないオーセンティックな志向性をもつ本作は埋もれてしまうのはもったいない。
ウシュアイア

ウシュアイア