晴れない空の降らない雨

ルパン三世 第2シリーズの晴れない空の降らない雨のレビュー・感想・評価

ルパン三世 第2シリーズ(1977年製作のアニメ)
5.0
 宮崎駿演出回だけ鑑賞。

①145話『死の翼アルバトロス』
 『コナン』のギガントみたいな超巨大爆撃機が出てきて、『コナン』のファルコみたいな可愛いアナログ航空機が突撃して、最後はフレンドリーファイアで自滅する。手を変えず品を変えず……まぁいいんだけどね面白いからね。
 恥ずかしながら、最初に不二子のファッションに触れないわけにいかない。上は引き裂かれたシャツ、下はスッポンポンというフェチ度高すぎる出で立ち。良い趣味してますわ。後半、適当な赤い布を腰に巻いて、あっという間に銃座を制圧。ルパンらのファルコに合図を送るとき、この布きれを旗代わりに振るカットがある。上半身しか映らないこのカット、当然下は再び真っ裸なわけで。「普通に裸でいる前半より、この方がはるかにエロいだろう!」という計算されつくした変態性。「子どものためにアニメを作るんだ」とか普段のたまいながらコレですよ。『ルパン』で不二子だから、もうやりたい放題。

 途中、ルパンを逮捕した銭形が「俺はなぁ鬼ごっこにはもうウンザリした」と言うが、これは第2シリーズに対する宮崎駿の不満を銭形に代弁させているとかいないとか。
 もうひとつ印象的だったのが、ファルコがアルバトロスの左翼に墜落した直後のギャグ(「顔だけシリアスにならないでよ!」)が、とても昭和のギャグ漫画っぽくて、宮崎アニメではなかなかお目にかかれないギャグで新鮮だった(『うる星やつら』によく出てきたやつ。流行りだったのか?)。

 そしてやっぱり作画が凄い。友永和秀や田中敦子のテレコム主力スタッフが『カリオストロ』から続投し、とんでもないクオリティ。冒頭から展開といい画面の情報量といい呆気にとられるが、その後も低クオリティな同時代アニメに当てつけるかのように(無論そんなつもりはないだろうが)細かい破片のアニメーションが何度も出てくる。
 もちろんアクション芝居もすばらしい。単に動きが丁寧だという話でなく、細かい動作もちゃんと「芝居」になっているところが宮崎作品のアニメーションの魅力で、それが全編に行き渡っているから、いわゆる作画オタクでなくても「(アニメでなく)アニメーションの面白さ」が伝わる(例えば、墜落中のアルバトロスから不二子が荷物を捨てるときに次元が巻き込まれて潰されそうになる所とか、いちいち面白いのだ)。
 

②155話『さらば愛しきルパンよ』(最終回)
 東京を舞台にした最終話。オープニングは俯瞰の風景とともに「1981 TOKYO」の文字。最終回だけあって思わせぶりな始まり方だなぁと思っていたら、「お前ラピュタから飛んで来たんか?」とツッコミたくなるロボットが宝石店を強盗。すると今度は「姫様どうされたんじゃ」とツッコミたくなるナウシカがロボットから登場し、島本須美の声で喋り出す。
 とまぁジブリから遡ると苦笑したくなる内容だが、逆に本作を観てから『ナウシカ』『ラピュタ』を観るという経験ができた方もやはり苦笑したのだろうか。
 お話は国家の陰謀で軍産複合体でロボットで戦車で……と『空飛ぶゆうれい船』を思い出させる話。『ゆうれい船』でアニメ-ター時代の宮崎が描いた、戦車が東京にいきなり現れてドンパチ始めるシーンは、堂々とリメイクされている。
 ロボットが町中で暴れ回るストーリーだからモブが多い。名も無き彼ら彼女らの動きにも個性があって観ていて楽しい。