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キャシャーン Sinsのブタブタのレビュー・感想・評価

キャシャーン Sins(2008年製作のアニメ)
4.0
馬越嘉彦キャラクターデザイン作品として『おジャ魔女どれみ』等と共に何と今頃グッズが発売されるそうな。
youtubeのタツノコチャンネルでは『キャシャーン』が見れるけど紀里谷和明監督実写版は可也オリジナルのアニメを再現してるのが分かる。
そしてその実写版の後、オリジナルから数十年の時を経てTVアニメ化されたキャシャーンが『キャシャーンsins』である。
マッドハウス✖️タツノコで制作には仮面ライダーで知られる小林靖子も名を連ねキャラクターデザインは『ハートキャッチプリキュア』等の馬越嘉彦による丸っこいキャラクターがタツノコアニメの正統的な後継者(的アニメ)に見えるし、可愛らしいキャラクターと余りにもハード過ぎる内容のギャップが逆に合ってる。
かの有名な前口上「たった一つの命を捨てて生まれ変わった不死身の身体~」や主題歌の「砕けキャシャーン♪♪」等の高揚感やヒーローアニメ的ヒロイズム、敵をやっつけるカタルシスは皆無である。
三隅研次的な世界って感想見たけどそう思います。
圧倒的に強い無敵の主人公、しかしそれが何かを変える事も誰かを救うこともほぼ無く、ただ虚無的世界を彷徨い戦っても戦っても虚しさだけが残る。
厭世感が支配する全てが崩壊した遠未来を舞台にした、ベクシンスキーの絵みたいな最終戦争後の全てが終わった後ですらまだ死ねない、記憶を失ったキャシャーンのアイデンティティを求める旅。
オリジナル『キャシャーン』とは関係ない、リメイクでも続編でもない別世界の作品ながら『キャシャーン』の数百年後或いは数千年後の続きの話しにも思える。
殆どの人類が死滅しロボットだけが生き続けている世界。
そのロボット達も「滅び」という謎の病によって滅亡に瀕している。
オリジナルではヒロインだったルナが、キャシャーンに殺され(?)て蘇り「命」も「死」も無限に生み出す事が出来る神(或いは悪魔)の様な存在になってしまっている。
内容は見てください(笑)

タツノコアニメ『キャシャーン』のリビルドであると同時に映画『CASSHERN』では余り上手く行かなかったギリシャ悲劇やシェークスピアの悲劇的な要素、それからやっぱり『ブレードランナー』の人間と人造人間の相克みたいなテーマもやったんじゃないかと思う。
世界は完全にロボットのみの世界であり、機械で出来たロボットもいれば殆ど人間にしか見えないロボットもいる。
キャシャーンやその同型アンドロイド・ディオとレダの新型キャシャーンみたいな美男美女はロボットというよりレプリカントみたいな人口的に作られた新たな種であり「次の人類」として造られたのだと思う。

ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』の映画版『ブレードランナー』には続編小説があって、残虐サイバーパンクとも言うべき『ドクターアダー』って知る人ぞ知る作品を書いてるKWジーターってSF作家が書いた『ブレードランナー2』及び『3』(『4』迄あるけど未訳)
『ブレードランナー』のその後、レイチェルとデッカードの逃避行のその続きの物語でレイチェルのオリジナルである「人間」やロイバティのオリジナルや同型レプリカント迄登場してやがて人間はレプリカントという「新たな種」に取って代わられる事が示唆され、『ブレードランナー2049』も内容的に可也(無断で?)影響受けてる。
『キャシャーンsins』はこのブレードランナーでは描かれる事はなかった「人類がレプリカントに取って代わられた世界」そして更にはその後の世界を描いていると思う。
「死ぬ事が出来なければ生きる事も出来ない」
不死者であるキャシャーンは言わば「神」であり神に挑む人間(アンドロイド)達の物語。
「神殺し」のテーマを人間でなく神の側から描いたお話しだったと思います。
ルナの護衛ロボットで身体から刃がヒュンヒュン出てくるロボット「死神ドゥーン」がカッコイイ。
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