こたつむり

メイドインアビスのこたつむりのレビュー・感想・評価

メイドインアビス(2017年製作のアニメ)
4.0
まずは小恥ずかしい告白から。
本作のメイドはメイドじゃなくてメイドの方だったんですね。自分にはご主人様属性が無いから…なんて忌避していたのは勘違いの極みでした。

と、度し難い告白が終わったところで本題。
いわゆる“可愛い絵柄なのに中身は壮絶”系。その評判は耳にしていましたが…それでも、第10話の展開は絶望の淵に追い込まれました。あれは覚悟が必要です。

また、何よりも見事なのが世界観の徹底。
人類にとって未知の領域である《アビス》を構築するための生態系やルールは考え抜かれており、疑似科学的な側面も含めて、考証が捗る仕上がりなのです。

更に見事なのが登場人物の思考パターン。
宗教を例に出すまでもなく、世界の理(ことわり)が変われば考え方も変わるわけで。弱肉強食の《アビス》に立ち入るのならば、甘ったるい倫理観など無用の長物。それを心得ているのです。

だから、主人公には躊躇がありません。
とても可愛らしい動物が登場しても、それが弱者であるのならば“囮”に利用するのは当然。かわいそう…なんて情緒だけで生き抜いていくのは出来ません。

ゆえに主人公たちへの試練も激しく厳しく。
偶然にも誰かが助けてくれる…なんてマンガ的な発想を感じないのです。切り抜ける手段がなければ捕食されるときは捕食される…それが現実。徹底的に過酷でした。

あと、微妙なエロスも現実を再現した結果かも。絵柄がファンシーだし、頻度も低いのですが、時折「ドキッ」とする描写があるのは“大きなお友達”向けのサービスだけではないと思います(実用度は果てしなく低いし)。

まあ、そんなわけで。
親を探して前人未到の地へと向かう物語。
描かれているのは恐怖に屈さずに歩む勇気です。

だから、作品に対してもネタバレ回避が重要。
その先にあるのは灼熱で干からびた屍か、それとも極寒で凍り付いた亡骸か。未知へと向かう憧れは誰にも止められない…という気持ちで臨むことをオススメします。
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