ウシュアイア

盾の勇者の成り上がりのウシュアイアのレビュー・感想・評価

盾の勇者の成り上がり(2019年製作のアニメ)
3.9
オタク気質な平凡な大学生・岩谷尚文(ナオフミ)は、異世界の災難「波」から救う伝説の剣・槍・弓・盾の武具をそれぞれ使いこなす「四聖勇者」の一人「盾の勇者」として召喚される。しかしナオフミは陰謀により濡れ衣を着せられ、「こうして俺は、信頼と金(支給された支度金)、名誉、勇者としての尊厳、全てを失った」から始まる理不尽に虐げられた盾の勇者の逆襲物語。

なろう系代表作を一通り最初の1シーズンだけ観てみようと『リゼロ』『無職転生』に続いて視聴。

理不尽に耐えたり、逆襲したいと思ったり、逆境でも頑張ったりした経験があったので、主人公に感情移入できるポイントがあり、カタルシスを感じることができた。そのため、『リゼロ』や『無職転生』と比べて自分には相性が良かった。

主人公の逆境でもできることをやろうとする気持ち、不遇の時に手を差し伸べてくれたり正当に評価してくれることのありがたさ、大きな目的のために過去のわだかまりを抑えることの大切さ(実際には難しいけど)、などに共感でき、前向きな気持ちにさせてくれる作品だったと思う。

とは言え、日本人は義経のことは好きだし『半沢直樹』がヒットしたように、不遇な人の応援したくなる判官贔屓の傾向があるので、単純にこういう話はウケやすいんだとも思う。

ストーリー構成は比較的短い1~2話のクエストエピソードの積み上げが基本で、戦闘能力が低い分定番の交易などで金を稼ぐといったところから始まるものの、他の勇者たちの活動による二次災害の尻拭いのエピソードは斬新だし、盾の勇者が虐げられることになった政治や宗教が絡んだ陰謀などからは骨太な設定を感じさせられた。また、召喚直後に虐げられ人間不信になり、負の感情に飲みこまれないようにしながら力に変えていくというのも面白い。そういえば負の感情の利用は『呪術廻戦』にもあった。

一方で、なろう系にありがちなハーレム展開であるものの、実際にナオフミは勇者らしいことをしているし、何より現実世界に戻ることを念頭にした距離感で仲間に接していることもあるので、アリだろう。

第1シーズンは落として上げて、落として上げての半沢直樹展開。続編は落として上げての繰り返しになるのか、テーマを変えて険悪な関係の他の勇者との協力関係の構築の方にもっていくのか、いずれにしても楽しめそうだ。

舞台は剣と魔法と獣人がいる欧風ハイファンタジーではあるものの、経験値やスキルなどのシステムが住民に認識された世界なので、ほぼ『ログ・ホライズン』などのゲーム世界迷入モノの世界観は好き嫌いが分かれるところ。

作画も映像も申し分ない。主人公のキャラデザインや装備は若干野暮ったい気もするが、作風的には合っていると思う。

主人公は時に負の感情をむき出しにすることもあり難易度の高いところだが、悪役でも定評がある石川界人さんのお芝居がとても合っていた。言うまでもないが、剣の勇者のキャラデザ、声からして完全にあの作品のあのキャラだよな。

次は『転スラ』『このすば』『蜘蛛ですが』あたりか。だんだんお腹一杯になってきたので、箸休めも必要か。
ウシュアイア

ウシュアイア