◆ 絶叫!焦げた大地に転がる現実!
少年は生き延びることができるのか!?
歴史に残る作品『機動戦士ガンダム』。
その世界観を拡げた最初の一頁。それが本作でした。
出来栄えも見事な限り。
透明感のある美樹本晴彦先生のキャラクター。高山文彦監督が仕上げたガラスのような物語。原典に配慮し、進化させたモビルスーツ。どれもが大切なピースでした。
何よりも文学的な余韻が格別。
サブタイトルに顕著なように、どこか硬質で、それでいて爽やかで、細緻なのに豪快。ガンダムらしくないのに、富野由悠季監督の世界観も否定していません。
だから、今でも面白いんですよね。
当時は斬新だったモビルスーツの解釈が古くなっても(ハイゴッグとかザクFZ型とか…嫌いではありませんが)優れた物語は古くならないのです。
しかし、口悪く言えば。
ありきたりの物語なのかもしれません。
戦争という事象は、切り取った断面によって娯楽にも悲劇にもなります。要は立ち位置の話。感情を殺すように目を瞑るのか、それとも一歩踏み出して見上げるのか。その違いが人生を大きく変えるのです。
それに、本作の登場人物は普通の人たちばかり。ニュータイプの「ニュ」の欠片もないのに“ガンダム”に関わったために人生が大きく変わるのです。それと“戦争の狂気”に巻き込まれることと何が違うのでしょうか。
まあ、そんなわけで。
一年戦争末期に起きた小さな(当事者にとっては大きな)物語。モビルスーツにワクテカしていると足元を掬われる…そんな戒めも含まれていますので、対象年齢は高めだと思います。
最後に余談として。
超傑作シミュレーションゲーム『ギレンの野望』ではサイクロプス隊を使えるのですが、地味に優秀な軍人さんたちなので重宝しました。特にシュタイナー隊長は別格。ニュータイプには敵わないものの、要所に配置すると良い仕事をするのですよ。流石です。