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BANANA FISHのNekiのレビュー・感想・評価

BANANA FISH(2018年製作のアニメ)
4.8
1980年代のニューヨーク、ダウンタウンでストリートギャングの若きボス・アッシュと、挫折から立ち直れない棒高跳び選手の英二が出会うところから始まるひとときのストーリーが原作。

ブロンドでグリーンアイ、見目麗しいアッシュは元ストリートキッズで男娼上がり、マフィアのボスのお気に入り…人も殺すし、銃の扱いや体術も長けている。おまけにIQは180以上。一方の英二はエンジェルのように純粋無垢で何もかもアッシュとは正反対だけど、他人のギリギリのSOSってやつを受け取れる優しさを持っている。

ニューヨークはすごくタフな街だと思う。
そんな街の裏社会で、何を信じればいいのか、この人生に意味はあるのかと本当は苦しみながら生きているアッシュの心に、日本からやってきた英二だけが気づく。

早くから大人に才能を、自分の身体さえも利用されてきたアッシュは大人を信用していない。それでも、望む望まぬに関わらず生き残るために人を殺さなければならないアッシュの手は血まみれ。掃き溜めのような街から、自分の属している世界から、どんなに憎くても出ていくことができないと本人もわかってる。だから英二の存在に、アッシュ自身何度も心が揺さぶられてしまう。

タイトルにもなっているバナナフィッシュをショートストーリーで登場させたサリンジャーは、子供時代誰もが持っている無垢さを愛し、自分の救いのように思っていた人。バナナフィッシュは元の話の中では子供とシーモアという大人にしか見えない海のお魚で、その魚がシーンに登場した後、シーモアは自殺してしまう。
イノセントだけがシーモアの心に瞬間でも立ち入ることができたわけだけど、でも彼を救うことはできなかった。

サリンジャーの小説に満ちているあの独特な雰囲気を、漫画やアニメを通して、生きる痛みや苦しみと共に垣間見ることができる作品かも。
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