あんへる

ヨルムンガンド PERFECT ORDERのあんへるのレビュー・感想・評価

ヨルムンガンド PERFECT ORDER(2012年製作のアニメ)
4.3
【2012年秋アニメ作品{全12話}】

※レビュー内容は1期・2期併せてのものです


〈世界平和〉のため、各国を渡り歩く武器商人のお話。
主人公一行は、適切な組織や団体に武器を売り、国家同士延いては世界の武力均衡を保つために活動している。

人と世界を憎む武器商人のココと、武器を憎む元少年兵のヨナ。
武器の持つ直接的な殺傷能力とそれ故の抑止力。
恐ろしくもあり頼もしくもある、そんな複雑でアンビバレントな構図が世界観や物語に奇妙な深みを持たせている。

基本ミリタリードラマを主軸に、随所にガンアクションなど映像的な見せ場を設けている構成。

トータルで見れば、会話劇等の説明描写で作品のほとんどを占めている風に感じるが、不思議と退屈なイメージはない。

確実に観る人を選ぶ作品ではあるが、ただ単に一つのエンタメ作品ってだけには留まらない、人を惹き付ける一種の哲学のような異質な魅力のある作品に感じる。
個人的にハマるハマらないがハッキリ分かれる様な作品って、往々にして似たような雰囲気を醸している印象がある。


登場人物は一人残らずクセ者揃い。というか皆んなどこか1個頭のネジが外れてる様な人間ばかり。
まともとは言えない奴らがまともじゃない世界で生き抜く姿は、自分の様な平和ボケした日本人みたいなのには特に鮮烈に映るんだろうし、それと同時に畏怖と憧憬が混じり合った複雑怪奇な感情が沸き起こる感覚がある。

世界情勢や社会問題など、絶妙にデリケートな題材を扱っている為か、現実の世界が舞台になってはいるものの、具体的な国名が伏せられていたり、暈した表現がされている部分もある。

世界は単純な様で単純ではない。
社会通念や規範意識なんてものは、結局は一部にとって都合のいい代物ってだけで、何でもかんでも当てはまるってもんじゃない。
その上、案外肝心な場所で役に立たなかったりする。
世の中勧善懲悪、善悪二元論ってだけじゃ語れない物事ばかりなのは誰でも知っているはずなのにだ。

たとえどんな環境だろうと思考停止ってのは人間として終わってる。
劇中のブックマンの『世界は陰謀で出来ている』って台詞が、若干厨二臭いけど象徴してると思う。


巧く人間ドラマを絡めた物語も好印象。
キャラの深堀りという意味で、バックボーンを効果的且つ効率的に描いている。
個人的には特にアールのエピソード(14、15話)が好きだったかな。
全体的に展開が早足で、心情描写も割とあっさりしている印象はあったが、キャラクターの設定自体に説得力を感じたので、そこまで違和感はなかった。(尺の問題もあると思うけど)

至近距離の乱戦(銃撃戦)にも拘らず、何故か味方側は掠り傷一つ負わないといったような、ご都合主義というか主要人物補正的な滅茶苦茶な戦闘描写もちらほら見受けられるが、そこはまあアニメ的ってことでご愛嬌w
実際、そこらへんを補って余りある迫力も魅力も戦闘シーンにはあったと思う。
あと音楽もノリが良くてカッコいいし。


小難しい題材の上に情報過多気味で話のテンポも早い、展開も目紛るしく変化する。
人物同士の情報戦、心理戦といったヒリヒリするような腹の探り合いの描写も多い。
そんな余所見してると一瞬で置いていかれる様な造りのアニメだからこそ、なかなか万人受けはしないんだろう。
(キャラ絵の好き嫌いとかはひとまず置いといて)
でも重厚な魅力を秘めた高品質な作品なのは間違いないと思う。

まぁ最終的なココの計画や目的がちょっとブッ飛び過ぎててポカーンとはしたけどね。w

取り敢えずミリタリー好きなら観て損は無いかと。
クセ強めでオトナの為の傑作アニメってとこですかね。


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[主題歌]

OP
黒崎真音「UNDER/SHAFT」

ED
やなぎなぎ「ラテラリティ」、「真実の羽根」
かの香織「虹航海」

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