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アベノ橋魔法☆商店街のkirioのレビュー・感想・評価

アベノ橋魔法☆商店街(2002年製作のアニメ)
3.7
最近、西武遊園地で「昭和」をモチーフにしたテーマパークができた。広義の昭和と言うとここ10数年「昭和30年代」、映画「三丁目の夕日」の世界観が多い
あの映画にしては、古き良き「栄光」としての「夕日」なのだろうが、SFのようなコテコテの世界観があまり好きになれなかった。一方、メディアでのそんな昭和回帰の元凶は結構、21世紀初頭に作られた、こんな「おっさんホイホイ」アニメにある気がする

「モーレツ!オトナ帝国」と並んで、こちらもズバリ昭和40〜50を回想する「哀愁の昭和レトロアニメ」だと思う
ごく小さいときに見てい記憶と高校生の時に改めて見返した時の擦れた感覚、その二つが混じり合って違う作品を見ていたような感覚に陥った。やはり作品に垣間見える「時代の影」のせいだろうか

そう、この作品、コメディを主体にしておきながら、そのパロディは「哀愁」と「過去」のメタファーであり、ストーリー本編は避けられない「現実」として妙に「重い」のだ

舞台となる大阪「阿部野橋」は、再開発を目の前にした古い街である…そう、この放送後の現代には「アベノハルカス」がそびえる街だ
妙にオッサンじみた少年少女の、妄想を交えたスチャラカ・パロディが展開される。だが、彼らには「祖父の死」と「引っ越し」という、子供では避けられない現実があった…

作品の制作も2000年代初頭とあって、当時40前後のクリエイターが多くいた時代
「大阪万博」「月の石」「特撮ヒーロー」「ブルースリー」
バブルから平成不況を乗り越えんとする「オジサン」たちの脳裏には、子供時代に見た風景が。そして今も、息子と同じヒーロー番組を見返していたかもしれない

何を隠そう、アニメ制作はノリに乗ってたガイナックスであり、「王立宇宙軍」の山賀博之、「エヴァ」庵野秀明、平松禎史、樋口真嗣、はたまた若き今石・すしおなんかも関わっていたわけだ

ちなみにアニメ自体には、古き良き深夜アニメの香り半分、やや独走状態の部分も多い

故に、今石洋之演出の2話「SF・アニメ」パロディ回はぶっちぎりで笑える

一方で、林原めぐみがカバーした「あなたの心に」のEDと、古き大阪を写したモノクロ写真には、深くくるものがある…
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