タクマ

ガンバの冒険のタクマのレビュー・感想・評価

ガンバの冒険(1975年製作のアニメ)
3.9
みんな集まれ!しっぽを立てろ!
海を一目見たくて港へと出てきた町ネズミのガンバはその先で参加したネズミ達のパーティーで傷だらけになった忠太と出会う。白イタチのノロイに故郷を支配され助けを求める彼の声を聞きガンバを初めとする7匹の仲間で立ち上がる事になる。
原作は斎藤敦夫さんによる児童小説「ガンバと15ひきの仲間」原作では多かった登場人物を本作をアニメ化するに当たってレギュラー格の7匹に絞ってそれぞれのキャラクターの個性や役回りを彼らに与えたのだそう。
本作を語る上でまず書かせないのがそんな登場人物達。
この物語の主人公で仲間のネズミ達のリーダになるガンバ。
ガンバの親友でマイペースで食いしん坊のボーボ、根っからの親分肌で人情に熱いヨイショ、
メンバーの頭脳担当のガクシャ、皮肉屋だが友情には熱いイカサマ、酒好きで風来坊な医者ネズミシジン、他の仲間よりも幼いながらも仲間の為にと言う強い信念を持つ忠太、このアニメ作品って全部で26話あるんですがこれだけバリエーション豊かな個性を持つキャラクター達を扱いながら誰かの影が薄くなるっていう事がまずなくてみんなを綺麗に使ってるのが凄いですね。このレギュラーキャラクター達って今見てみると悪く言えば個性が古くさくてベタベタだけど僕ら人間以上に人間臭くてみんな生きていく上での愛とか優しさを持ってて見ていたら凄く気持ちが良いんですよね。特に野沢雅子さんが演じるガンバの王道な熱血キャラぶりはこの手の冒険活劇には欠かせないエネルギッシュなキャラクターですね。
この作品のラスボスであり日本アニメーション屈指の悪役でもある白イタチのノロイ。このアニメ自体はリアルタイムで見ていた世代ではなくて昔爆笑問題がMCを勤めるバラエティ番組「なんて番組名やったかは忘れた」で特集が組まれたアニメ作品の中にこれが混じっていてそこで紹介されていたのがノロイによる島ネズミ達への虐殺場面でした。その僅か数分もなかったかも知れない切り取りされたシーンがめちゃくちゃ怖かった事。大人になってから見返した時は演じてる大塚周夫さんの怪演がえげつないのもあってもっと怖く感じた。リアルな自然界は食うか食われるかの力関係で狩りが行われるけどノロイの場合はただ純粋にネズミ達を殺すのが楽しいから殺してるっていうのが余りに異質で猟奇的な設定。抵抗するガンバ達をあの手この手で追い詰めていたぶりながらなぶり殺そうとする様はまさに最怖の悪役。このアニメはそんな強大で恐ろし過ぎる悪役を前にネズミ達の、友情、裏切り、無惨な死、愛、尊厳、色んな側面で物語が描かれていきますがそんな所に人間として一番大切な物はなんなのか?と言うメッセージが込められてる気がします。互いを信じあい暴力や恐怖に屈する事なく魔王に立ち向かった可愛らしく愛らしい勇者達の姿に胸を揺さぶられる激作。
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