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御先祖様万々歳!のgockのレビュー・感想・評価

御先祖様万々歳!(1989年製作のアニメ)
3.0
原作に忠実な『うる星やつら』のリメイクが近いので、昔アニメの監督してて『うる星やつら』のダークなパロディっぽいコレの事を思い出して数十年ぶりに観た。それでいて同じ場所で延々と長台詞を喋りまくる舞台演劇っぽい構成。
核家族に、未来から来た子孫・麿子だと名乗る不思議な美少女が舞い込んで共同生活を送り家族が崩壊する話。
で「何が夢で何が現実なのかわからない」「大して中身のない流れるような長台詞」「自分が担当してた楽しいアニメを皮肉った造りのアニメに変える」「生活感のある登場人物とデカいリアクション」「作品そのものへの批評を始めるメタ的な台詞」「立ち喰い師・哭きの犬丸」とか押井守の得意技がふんだんに盛り込まれている。
当時の10代の自分はこういった得意技に対して「かっけー!」と心酔していたが、押井マジックが完全に解けてしまった今観ると割と露悪的で幼稚に思えてしまうところもある。
でもドライなキャラデザインや声優の演技が上手すぎるので押井への興味ゼロになってしまった自分から見ても良いアニメだと思う。押井マジックにかかったままの人なら星5つ行くかもしれん。

前述したドライなキャラデザインは今見ても古びてない……という長所はあるけど、キャラの性的魅力を完全に削ぎ落としてる上に感情を殺した長台詞をまくしたててるので作品は面白いけど好きになれるキャラはいないという短所がある(文明は魅力あるかも)。
なんでキャラを好きになれない(=感情移入を許さない)のが短所かというと「犬丸が麿子を好き」というのが全くわからないんですよね。最初から全然すきになれないから。
これが『うる星やつら』みたいなイキイキしたキャラクターだったらラムを失ったあたるの哀しみに感情移入できるんだろうけど。だから、この造りは長所と短所があるなと思った。昆虫観察のような楽しみ方はできると思うが。
物語の真相は、文明が言ったことそのまま派。連鎖を断ち切ろうとして達成したんだろう。

※追記: これ読んだ友達が「最終話で哭きの犬丸が誕生する話」という立ち喰い師史観での評を語ってくれて、そう考えたら本作がもっと面白く感じた。犬丸が立ち喰い蕎麦食うシーンが本当にうまそうだ。古川登志夫はパトレイバーの遊馬が食う立ち喰い蕎麦もめちゃくちゃうまそうだった。すする音がうまそうだよね
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