きゃんちょめ

四畳半神話大系のきゃんちょめのレビュー・感想・評価

四畳半神話大系(2010年製作のアニメ)
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私が「一番好きなアニメは?」と聞かれたらコレだと答えることにしている。

このアニメは、「変えようがない自分の本質に、変えられる属性をどんどん変えてみることによってのみ、気づくことができる。そしてその変えようがない自分の本質が分かれば、その自分を愛し育てていくことで、その延長線上に自分が進むべき道が自然と見えてくる。気づくべき自分の進むべき道は、どこか遠くにあるのではなく、すぐ目の前にある」ということが言いたいアニメだと僕は思っています。

『四畳半タイムマシンブルース』という『四畳半神話体系』の続編があります。その中で、「無気力な人間が自己を変革するような映画を作るべきだ。」と自分が制作した映画を城ヶ崎に酷評され、落ち込んでいる明石さんに対して、小津は次のように言うシーンがあるのです。「変革なんてしなくていいんです。無気力な人間はそう簡単に変革しません。むしろ、周りを巻き添えにしてより無気力な人間を増やすなんてストーリーはどうです?」と。

小津はやはり、自分を変えようとするのではなく、不要な仮面のせいで見えなくなっている本来の自分に気づくということこそが成長なのだと思っているようです。自己変革をせよという城ヶ崎の考え方は、小津の思想とは異質なんですね。

さて、本作、『四畳半神話大系』の第11話で「不毛と思われた日常はなんと豊穣な世界だったのか。ありもしないものばかり夢見て自分の足元さえ見ていなかったのだ。」というセリフがあります。これは僕がこのアニメから受け取った最大のメッセージです。小津はどのサークルを選んでも必ずついてきてしまうし、変更不可能なものです。しかし、その変更不可能なものこそ、「私」にとってたったひとりの親友なのですね。変更不可能な友人や性格やうだつのあがらない日々を極楽として愛さねばならないということを、僕は初めてこのアニメを見て心の底から納得しました。

樋口師匠と羽貫さんがエジプトからピラミッドとラクダの写真を送ってきているラストシーンでとても感動しました。僕も樋口師匠のようにいつかなりたいです。
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