レインウォッチャー

Fate/stay night: [Unlimited Blade Works] 2ndシーズンのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

3.5
このシリーズが苦心したこととして、衛宮士郎というキャラクターをいかに成立させるか、があったのではないかと思う。
無印版『stay night』ではともすれば頑固なだけの足手まといにしか見えなかった主人公を、「正義の味方」として快く背中を押せる存在に育てるにはどうしたものか…と。

もちろんアーチャーとの出自に絡んだエピソードは今作の肝でありつつその軸となるものだけれど、内外の細やかな補強も忘れてはいなかった。

ひとつはストレートに、ヒロイン凛をして「あなたの生き方はひどく歪つ、壊れてる」と当時約10年前から誰しもが思っていたであろうことを言わせ、一回ガン詰めして理論武装の千本ノックをしておくということ。この判断は思わず拍手してしまった。エライ。ようやるわ。

もうひとつはカリスマ的絶対悪を用意して、矢印の方向をそちらに向けることだ。
そう、ギルガメッシュ大先生である。わたしはここ10年来で初めて本気で「…こいつだけは許せねえ」と強く思うことができた。

希望としては、もっと鼻水ズルズルになるまで叩きのめして欲しかった感はあったけれど…無敵に見える存在に、主人公の万能とはいえないスキルこそが天敵になる、という展開はやはりシンプルに熱いし、「きさまごときに本気を出さんとならんとはな!」というTHE・イキりボスフラグを引き出したのはすばらしい。

ただそれでも、それぞれの正義哲学なんかをしゃべくり倒す展開にはさすがに辟易してみたり。初めて、映画やアニメを倍速視聴する勢力の気持ちがわかったかもしれない。
そんな時間あるならもっとイリヤの出番増やしてよ、というのは正直なお気持ち。でも、この抜群の作画クオリティを保つための休憩時間ととらえればまあ価値はあるのかなあ。(鬼滅でも似たようなことを思ったな)