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機動戦士ガンダムAGE MEMORY OF EDENのnobuoのレビュー・感想・評価

3.5
コロコロコミックとの提携、そして祖父・父・子の三世代を描くストーリーで話題になったガンダム作品。10周年を迎えた2021年に補完総集編の本作を観たものの、当時は作品項目が無かったので「AGE」本編項目宛にレビューしてました。いつの間にか新たに項目が作られていたようなので投稿し直します。


まず、「AGE」本編への所見について…。
脚本家(ゲーマーにはお馴染みのLEVEL5社長:日野氏)のビッグマウスや低等身多めのキャラクターデザイン、或いは露悪的なまとめサイトの影響もあってか“ガンダム史上最低の駄作”の烙印を押されがちな「AGE」。
ZZ、運命、鉄血2期以外のガンダムTVシリーズを全て観た俺の意見としては“良作になり損ねた凡作”といったところ。確かに脚本は酷い有様だが、褒めるべき部分も多い為一概に駄作と断じることはできない。少なくとも最低の作品だとは思わない。


愛する人との別離を繰り返す事で、よく居る少年パイロット→タカ派の軍人→暴走しかける老害という変遷を辿る主人公フリット。彼の一貫した“正しくなさ”を意図的に相対化して見せるプロットは良かった。
いや、本当にプロットは良かったんですよプロットは。レベル5がスクエニと仕事を共にしたゲーム屋である以上、間違い無く「ドラクエ5」や「サガフロンティア2」を意識した世代またぎ大河ストーリーも、ちゃんとした脚本家が手掛けていれば上記二作品並みの良作になる余地があった。良質な食材をダメなシェフが調理してしまった良い例が本作だろう。
殺意を剥き出しにした第一世代ラストバトル時の主人公、第三世代で明らかになる火星圏の惨状、祖父・父・子の思想対立が露わになる言い争い等、印象深い良いシーンや演出も数多く記憶に残っている。とはいえ、これらは“点”としての記憶しかない。点を線に繋げるストーリーを構築出来なかったのは、やはり日野社長の所為か。
後述するように、第二世代以降のメカデザインも良かった。裏設定やゲーム版でしか登場しないモビルスーツにも優秀なデザインが揃っている。プラモに再販がかかる度に即完売するのも頷ける格好良さだった。だからこそ、第一世代の残念さが非常に勿体無い...。


本編がコケた最大の要因は、出だしの第一世代:フリット編が特に酷かった為と思われる。地味でグダついた展開が続いたのも論外だが、何よりマズかったのはトータルデザイン。キッズ層をターゲットにした以上、ストーリー云々の前に販促アニメとして機能している必要がある。にも関わらず、初代主役機:ガンダムAGE-1の換装が何れもダサい、主人公フリットは髪型も私服もパイロットスーツも奇抜なセンス。第二世代以降はキャラもメカもスーツも垢抜けたデザインの為、それらを引き立たせる為の意図的な仕掛けかもしれないが...。出だしで販促頑張らなくてどうするよ日野さん!?第一世代で洗練されていたのは機体のユーザーインターフェースと敵のメカデザインだけだって。子どもだけでなく、ここで振り落とされたガンダムファンも多いのでは。



さて、「MEMORY OF EDEN」はメインライターを変え第二〜三世代ライバルキャラ:ゼハートを主役にした構成の総集編(新規映像は2時間半中の1時間。豪華!)で、心情描写が増えた影響でTV本編より見応えがある。精神的に追い込まれ正常な判断力を失い、不本意な計画に殉じる哀しきピエロへと堕ちていった彼のエピソードは心に刺さった。

全く、こういった掘り下げを各キャラ全員本編でやれば良かったんだよ!!AGEはとにかく尺が足りない癖に無駄エピソード+死ぬ為に登場するようなポッと出の無駄キャラが多かったので、それらをカットしてメインキャラに焦点を当てていればなぁ...。

尚も残念なのはXラウンダー(所謂ニュータイプ)適性を持たないコンプレックスを抱える第二世代主人公:アセム。最終的にゼハートを圧倒する技量を手に入れるものの、その要因は元来持つ才能と恩師の死と精神論。ロジックも何もあったもんじゃない。“覚醒できずに悩むオールドタイプ型主人公”というガンダム的に美味しい設定にも関わらず、肝心の成長描写がこれって...。こういった子ども騙し的な部分を総集編で軌道修正して欲しかった。
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