ウシュアイア

アオアシのウシュアイアのレビュー・感想・評価

アオアシ(2022年製作のアニメ)
4.3
愛媛の中学校の弱小サッカー部のFW・青井葦人はJリーグの名門東京エスペリオンのユースチームの監督福田達也に才能を見出され、上京してJユースの名門チームの門を叩き、プロのサッカー選手を本格的に目指していくお話。

『キャプテン翼』や『スラムダンク』すら読んだことがないくらいスポーツ漫画はほとんど読まず、スポーツ作品はあまり観ないのだが、『ブルーロック』にハマったことをきっかけに、ならば双璧をなすと言われる本作も見てみることにした。

主人公のキャラがガキっぽい田舎のお山の大将で、帰省中の名門チームの監督に声をかけられるというベタな展開、サッカーよりも主人公をめぐる人間ドラマに大きく尺を使っていたことから、序盤はやや退屈しながら観ていたが、Jユースのチームに入団してからの中盤以降から面白くなって視聴が止まらなかった。

サッカーの基本的な考え方や戦術やボールのつなぎ方が分かるようになっており、サッカーを知らない人にも優しいので、サッカー論を説いた作品でありながらスポーツ作品が苦手な人でも十分に楽しめる。

主人公はガキっぽいものの、挫折にもめげずに努力友情勝利をひた走るため、古き良き少年誌のスポーツ漫画の王道を行くタイプで、懐かしさを覚える。毒にならないこともあって、放送時間帯は夕方だったのだろう。

以下、若干のネタバレ。

後半に入り、監督からの衝撃的な宣告のシーンには考えさせられるものがあった。

大人になるとというか仕事で自分が思うようなポジションを取れないことがあり、悩みながらもそれを受け入れてしまうのは、実際自分のことは思っているほど分かっていないいないし、自分の持ち味や役割は周囲との相対的な評価で決まってしまうということを知ったからだと思う。なりたい自分ではなく周囲から求められる自分にならなければいけないのは高校生の葦人にとってはしんどいものがある。本作を見て、悩みながらも腐らずに頑張ることって大切だという気持ちにさせられた。また、本人のなりたいものと違う結果に導く監督やコーチ(大人)の悩みもよくわかる。

ただ、葦人の能力がちょっとチートスキルの超能力のように見えてしまうことがあるのはやはりひっかかる。

ProductionI.G制作のアニメーションのクオリティは高く、映像は申し分なし。主人公の葦人役の大鈴功起さんはほぼ無名だが、田中真弓さんや野沢雅子さんのような少年役のベテラン女性声優さんの演技を思わせるお芝居で、素晴らしかった。
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