鈴木ピク

海賊王女の鈴木ピクのレビュー・感想・評価

海賊王女(2021年製作のアニメ)
1.9
アニメーションの美しさは突出している。
部分的な動作の作画が良いとか背景が美しいとかキャラの動きがしゃんとしているか、そうした断片が全部統一されて美しいレイアウトが持続していく。
ただそれでも、話の面白さには全然寄与しない。
一話一話の脚本の組み立ては悪くなくて、脚本家のせいだとは思いたくない。
ただ根本的に何を描きたい話なのかまったく見えてこなかった。
このタイトル、さぞ海賊として活躍する少女を見せてくれるかと思ったのに、最後まで守られる王女としての立場が実は変わっていない。
このタイトルにして!2021年のアニメなのに! その肝の部分で何かを考えて構築した後が見えないのだ。
アニマトリックスやキル・ビルで知られるスーパーアニメーター:中澤一登。監督デビューとなるNETFLIX『B:THE BEGINNING』は山川吉樹監督との共同作品で、スピーディーな演出で一気呵成に見せる、ジャパニメーションと洋ドラの融合のような演出術が見事だった。
けど本作を経て振り返ると、あちらも中身は特になかった、というか思い出せない。若者が声を上げるのが気に食わないみたいなやけに保守じじい臭い台詞が引っ掛かったのは覚えているが、、、

芸術的ですらある高度なアニメーションが、ここまで空疎な余韻しか残せないという事実に愕然とするが、逆にここにしかるべき物語が与えられれていたら、、、と思わなくもなかった。
鈴木ピク

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