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ユーリ!!! on ICEのKのレビュー・感想・評価

ユーリ!!! on ICE(2016年製作のアニメ)
4.7
22/7/2022 fri 20:27 Netflix


いつまでキスクラいんだよ!


作品に対して抱くバカデカい感情と、クィア表象について思うところとアニメーション表現と、ホモフォビアとミソジニーについて長々と語りました↓


ア〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!終わらないでーーーーー!!!!!!!!!!一生この空気感の中に浸からせていてくれーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!
と思いながら挑んだ12話、あっさり終わってくれて良かった。。。。。これ以上デカい感情をぶつけられたら文字通り失神しているところだった。。。ところで2期は??→映画もまだなんかい!いい作品を魅せるためにしっかり練ってほしい。ファンのためにね。お願いします。
この濃さの内容をたった12話でやるな!!!!気絶するぞ!!!!と言う気持ちと、12話だからこそこの濃さに仕上がったのだ……という気持ちがある。欲を言えばこの濃さなら何かしらの表現にあともう少し踏み込めたな、と思ってしまう。いい意味でね。個人的にはこの作品を鑑賞することで、現実の競技フィギュアスケートにも詳しくなれることを期待していたのでその辺りのより詳しい掘り下げとか。まあそこを描く目的の作品ではないと思うので良いが。

クィア表象に真っ向から向き合っていて好感しか持てなかった。女性向けのコンテンツってそれだけで見下され敬遠されるので、同性同士の絆を真っ向から逃げずに描いてくれることは心強さに変わる/反面、クィアベイティングじゃん?と思う瞬間も多々あった。同性愛者のスケーターがこの作品世界に一人二人いてもおかしくないところなのに、全くもって匂わされもしなかった。散々勇利とヴィクトル間の愛情を取り扱っといて。そこは恨みに思ってますよ。
ただ、勇利が僕が表現したいのはヴィクトルとの『愛です』と確か4話あたりで宣言してくれて報われたようなハッとしたような。もんやりとさせず、しっかりと愛がそこにあることを当人に発言させるのはかなり力強く心強いのだ。でも同性愛としてこのシリーズを描くことは決して無く、"師弟間の愛や信頼する男性間の愛こそ尊ぶべき愛です"と言っているようなものでそれはちょっとなあ…と思う気持ちもあり。同性愛嫌悪と捉えられても文句は言えまいよ。
ちょっと前にTwitterで"BLをやるのは、そこに愛がありますよね?という確認のためでもある"という言葉を見かけて頷いていたことを想っていた。以前『レザボア・ドッグス』で描かれているのは男性間の愛か?という自分の中の問いがあり検索してみると、インターネットの回答者たちによるとあれは「愛ではなく仁義」とされておりかなり納得がいっていなかったことがあるので、このツイートはとても刺さった。その説で言えば2人の間の愛を描く、確実に正しい、その通りな作品。この作品をBLと称するべきか?いや、もうBLと自分の中で定義しておこう。どこからどう見てもBLだもんね。これは揺るがないよ。定義は自由であるべきだ。
それと同時に定義できない愛も自由であるべき。性愛(身体性)を伴わない愛情もはっきりと愛情だと認められるべきだし、友愛と恋愛の違いが判らない自分はそういう曖昧なものに心地よさを感じるから。自分が友人達との交わりの中で包まれる特別な居心地の良さ、もしかしたら勇利とヴィクトルも同種のものかもしれないし。ある種はっきりとロマンスでありロマンスではない。
(ああ、この作品をめぐる自分の中のこの葛藤に決着がつく日は来るのだろうか。肯定したい気持ちと否定したい気持ち、本当に微妙な立場にいる。)

何にせよ、2016年に製作された作品だからこそセクシュアリティに関するバッシングをあまりダイレクトに見受けないなあと。(当時のファンたち、どうでした?教えてください。)『腐媚び』とインターネットで揶揄されていたのは当時のファンではないが記憶にある。(腐媚びとかいうミソジニー満々クソ単語、滅ぼしていきましょうね。) 指輪回で大盛り上がりしていたし、随分攻めた内容の作品をやっているなあと思っていた記憶もある。もし数年経った今現在製作されていたら、少し違った視点の仕上がりになっていたのかなあと夢想する。はっきりとふたりは恋人関係を結んでいたかもしれない。(…ミソジニーとホモフォビアを拗らせているアニメーションファンが未だに多い業界で、それが批判されずに支持されるかどうかは置いておいて。しかし本当に根深いのだ、オタクたちの世間の見えてなさは。) 少なくとも当時より議論が活発な世の中になっているはずだ。…なっているといいなあ。



不断の努力という語から生まれた作品があるならこの作品だろうな。劇伴、一話から崩れることの全くない作画、淡いが決して幻想めいてはいない確実な背景美術、心地よくだが地に足をつけて進められるテンポ感、コマ送りでじっくり眺めたくなるほど手の込んだスケートシーンの身体描写……。この作り込みに溜息が出てしまう。
梅林氏と松司氏による劇伴がほんとに良い。一生聴いてたいし、なんなら人生におけるでっけえ何かしらのイベントで使用したいくらい。空港で愛おしい人間と再会した時にat the airport流されてたすぎる……。バルセロナの街中の場面でかかってたお茶会の曲("Afternoon Waltz"?)も良かったし…非の打ち所なさすぎるよ。
CM前の各国の美味料理や、エンドロールに差し込まれるインスタダンスバトルなどの短いインサートなど、毎話毎話超ストーリー展開や演出に工夫が凝らされていて毎回情緒ぶっ壊されちゃった。原作ありの作品だとここまでしなかったかも。一話ごとの密度は極限まで高い反面、一度に詰め込み過ぎてもっと余裕あるペースで観せてくれても良かったのに、なんなら第2クールで、とも。でもこの忙しなさがこの作品の持ち味でもあるしね。
恥ずかしながらMAPPA作品は呪術しか観ていなかったが、呪術を観た時に受けた「絵が自発的に動いてる」という衝撃と感動はユーリ!を観て確信に変わった。それからこのスタジオのことを信奉している。(『バブル』を友人達と映画館で観た後「MAPPAならもっと上手くやってた」「STUDIO 4℃ならもっと面白かった」と語り合ったなあ。)

かっきー(※なんと7/27に発覚したけどかっきーじゃなくてヨナーじゃん、恥 代永ではないほうの…今までずっとおで…おで…)今までピンとくるキャラいなかったけど勇利で初めて好きになったかも。今まで嫌いだったわけじゃなくて、ピンと来てなかったし触れる機会が少なかっただけ。本当に演技が上手いのね。
内山昂輝氏は…最近引っ張りだこだけど技術はたいして伸びてないのよね…小声 それはそれとして、ユーラチカというキャラクターは最高だった。勇利が競技人生を続けるための、固い意志を宿したいち燃料である。映画版で活躍してくれ〜〜〜まだ企画が続いてればの話だけどね!
流石の諏訪部。「理解」しかしてないじゃん役と作品への。屈服。

サブキャラクターの詰めかたもいい塩梅だ、勇利の盟友でとにかく明るいピチットくん!!!!!!!!!!!!!!ファンです
あんげんのクリストフも良かったなあ〜〜。マスキュリンな彼の声がキャラクターによって印象が変えられている、マッチョとセクシーの両立は可能であることの理解。


結局さ、登場人物たちへのホモフォビアと、メインターゲットの女性へのミソジニーが当時から渦巻いてたと思うけど、当時ほぼアニメから離れてた自分も認知するほど大流行りしたってことが答えだし救いなんだよね。女性向けコンテンツの勝利じゃないか。皆クィアフィクションのこと実は好きでしょ。男性も、いい加減自分自身を性的に扱われることに慣れてくれ。人間何年続いてると思ってるんだ。(podcast『無差別ラジオ』"セックスアンドザムサベツリターンズ" https://open.spotify.com/episode/1Hj9XQ8GEjh0WUFhrP8dBv?si=A2_mDhHfSTWGN_y46DKeHQ 参照のこと。)
長々と書きましたけど要は:アニメーションファンからの批判、キッショ!!!!女性が創作を楽しむことへの抑圧と、自分達の性別ばかりを棚に上げて同性愛を嫌悪する仕草、キッショ!!!!!このアニメシリーズは最高!!!!!!!!!!!!
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