昔々、壁を見て育った或る男を軸に描いた人の世の営みについての物語
10年に渡って続いたシリーズがついに完結
正直、この作品の感想を考える時間があるなら、ただひたすら余韻に浸っていたい、というのが本音。
最後のスタッフロールを観ながら、人はなぜ歴史を繰り返すのだろうなぁとありきたりなことを漠然と考えもしたが、思えばこの『進撃の巨人』という作品は、その疑問に対する逆説的な答えのような気がする。
歴史に記されるのは物事の表層的な記録のみで、そこに生きた人たちの記憶などではない。英雄として祭り上げられる者の苦難も、災厄の元凶として暴虐の限りを尽くした者の想いも、その闇に横たわる死屍累々の願いも、歴史を読むだけでは決してわからない。
それでも人が歴史を記す(遺す)のは、理屈を越える出来事を目の当たりにし、その身を以って経験したことが、未来をより良くするきっかけとなることを願ったから。
理屈だけで人が動くなら、同じ過ちを繰り返しはしないし、命を賭して戦うこともない。彼らを突き動かしたのは、理屈を越えた各々の想いや願い、信念に他ならない。
『進撃の巨人』とは、そういう言葉だけでは伝わらないものを描いた作品である。
てなわけで、未見の方はとりあえず最初から観ましょう。