コマミー

平家物語のコマミーのレビュー・感想・評価

平家物語(2021年製作のアニメ)
4.5
【最終回のその先は】



もうこれは凄いと言う他ない。

私達が知っているあの「平家物語」が、より身近に感じ、そしてより"命を感じる"アニメーションとなってやってきたのだから。

本作でやはり魅力的なのは、絵のタッチや雰囲気である事は間違いないのだが、私達はこの物語の"最終回を既に知ってる前提"で鑑賞すると言う事だ。"平家一門"の命運は大方教科書でも習っているし、「平家物語」と言うものの影響力と言うのも、我々では計り知れないと言う事も充分承知している。

………だからこそ、一コマ一コマが大切に見えてくるのだ。そしてだからこそ、涙が止まらない。

そして、"少女びわ"が見た平家一門について"知らない表情たち"も、美しいタッチと共に語りかけてくる。それは栄華を誇るだけではない、"家族としての在り方"。出会い…そして別れを繰り返し、それでも時代は動いていく。そんな、1人の人間としての平家を、びわの"瞳"を通して、語り継いでいくのだ。


明日…明後日…これから…ずっと先…。
いつか…そして「また今度」……。

我々はそうして、また明日を迎え、1日1日を生きている。平家も、貴族も、源氏も、動物も、そして全ての生き物たち…。
そして、全てにはいずれも"人生の最終回"というものがあり、その運命は"最初から決められたもの"なのかもしれない。

でも、語り継いでくれる人がいる限り、その"物語は続いていく"……。

どんな人でも、最終回のその先というものがあるのだ。


〜祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり 沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらはす 奢れる人も久しからず ただ春の夜の夢の如し 猛き者も遂にはほろびぬ 偏に風の前の塵におなじ〜


そんな、美しき人達の"叙事詩"こそが、この「平家物語」だったのです。
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