空化

平家物語の空化のネタバレレビュー・内容・結末

平家物語(2021年製作のアニメ)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

面白かった。
まずOPが好きだった。
キャラクターたちが瑞々しい表情を見せ、群像劇であることを強く印象付けられる。
平家物語というと「盛者必衰の理をあらわす」とおり栄華を極めた平家が没落していく様を描いた物語であり、暴虐理不尽な平家を源氏が打ち滅ぼす物語でもある(と思っている)。
私は後者の印象が強かったので、平家一族をはじめとしたキャラクターたちのの暴力とは遠い一面を見せられたことでアニメ「平家物語」が一人一人の人間を見つめる物語であると思った。

戦いのシーンは……現在のウクライナ情勢が頭をよぎり辛いものがあった。
為政者の思惑で兵士が争いに連れていかれ命を奪い合い、為政者に勝利を届ける。
華やかな寺院で勝利の報告を聞き届けた為政者は臣下と共に宴に興じ、寺院の外では疲労困憊で倒れ込む兵士たち。
如何に暴虐な為政者だとしても、その下で散る数多の命があることを思うととても胸が辛くなった。

びわが時子を助けるラストシーンは印象的だった。
海に沈んでいく時子が見えていた「びわ」はその未来に逆らい「まだ役割がある、生きろ」と手を差し伸べる。
そして時子は亡くなった者たちを思えば胸は痛むが「祈り」を捧げることでしか魂を癒すことは出来ないと悟り、祈りを捧げる人生を歩む。
「びわ」は見えていた未来に逆らった罰(?)として視力を無くす。
そうして壇ノ浦の戦いの後が描かれたあと、終わりに向かっていく物語で「平家物語」の語りだしが完成されていく演出は見事だった。平家物語を読んでみたくなった。

最初は似たような名前が多くて覚えにくいと思っていたが、一人一人のキャラクターに愛着が湧き、平家が没落していく中で絶望を抱えながら生きていく、または死を選ぶ様を見るのは大変つらかった。
それだけキャラクターを愛しく描いていた。
空化

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